初年度王者、クプラ陣営W2 Pro GPが2ヒートを制覇。新人テストも実施/TCRサウスアメリカ第9戦

 カレンダーどおり10月21~22日にブラジルのヴェロチッタで開催されたTCRサウスアメリカ・シリーズ第9戦は、初年度王者でもある地元ブラジル拠点のW2 Pro GP陣営が躍動。レース1ではラファエル・レイスがポール・トゥ・ウインを飾り、レース2も僚友ガリッド・オスマンが制するなど、それぞれクプラ・レオン・コンペティションTCRが両ヒートを制覇した。

 そのレースウイーク後には、来季への可能性を考慮して数名のブラジル人ドライバーにマシンをテストする機会を与えるべく、PMOモータースポーツがヴェロチッタに残留。女性ドライバーのタリーン・チコスキーやシングルシーター経験者のフェリペ・ジュンケイラがプジョーとリンク&コーを試している。

 第5戦はウルグアイのエル・ピナール、第6戦はアルゼンチンのサンルイスにて新生TCRワールドツアーの連戦を迎え入れたTCRサウスアメリカだが、この第9戦は地元ブラジル・シリーズとの併催で実施された。

 豪雨に見舞われた前戦ではTOYOTA GAZOO Racingアルゼンティーナ謹製のトヨタ・カローラGRS TCRがスピードを披露し、ベルナルド・ラヴァー(トヨタ・チーム・アルゼンティーナ/トヨタ・カローラGRS TCR)とファビアン・シャナントゥオーニ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)が、それぞれフルウエットの難しい条件を制したが、天候に恵まれたドライの今週末はスペイン製の車両に主役が入れ替わることに。

 ここから予選Q1とQ2の双方で最速を刻んだレイスのクプラは、明けた日曜現地9時10分からのレース1でも他を寄せ付けぬ展開で“ライト・トゥ・フラッグ”を達成。ファン-アンヘル・ロッソ(パラディーニ・レーシング/トヨタ・カローラGRS TCR)を従えての今季2勝目を飾った。

「この場所でこの結果を得て、貴重なポイントを獲得できたことにとても満足している」と、第3戦耐久フォーマット以来の勝利となったレイス。「レース中盤にセーフティカー(SC)が入ったから楽な状況にはならなかったが、最終的にはなんとかできたね」

 続いて午後13時前に始まったレース2では、選手権首位の18歳イグナシオ・モンテネグロ(スクアドラ・マルティーノ/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がリバースグリッドから出遅れると、技術的問題により2周目にコース上でストップし、またもSCが出動する事態に。

 レースは5周目に再開されると、後方からジリジリとポジションを上げてきたオスマンが、残り9分でリバースポールシッターのギリェルメ・ライシェル(PMOレーシング/プジョー308 TCR)との差を詰め、13周目でリードを奪うことに成功。ここでタイヤが力尽きたプジョーはピットへ向かうこととなる。

初年度王者でもある地元ブラジル拠点のW2 Pro GP陣営が躍動。ガリッド・オスマンも予選3番手を得る
レース1ではラファエル・レイス(W2 Pro GP/CUPRA León Competición TCR)がポール・トゥ・ウインを飾ることに
「この場所でこの結果を得て、貴重なポイントを獲得できたことにとても満足している」と今季2勝目のレイス

■モデル兼ドライバーのタリーン・チコスキーがTCRカーを初テスト

 その直後にはトラブル解消でコース復帰していたモンテネグロのシビックRがふたたび息絶え、2度目のSCが導入される。しかしギャップ消失の危機も乗り越え、16周目の再開以降も首位を守り抜いたオスマンは、ペドロ・カルドゥソ(ヒョンデN・チーム・スクーデリア・キアレッリ/ヒョンデ・エラントラN TCR)や2戦連続3位表彰台となったトヨタのロッソを従え、こちらも耐久戦以来の2勝目をマークした。

「本当は午前のレース1でも勝利を狙っていたんだけど、今回はなんとかマネージして勝つことができた。レース自体はとてもハードだったよ」と安堵の言葉を述べたオスマン。「これで次戦の(代替された最終戦)カスカバルに向けて、フレッシュな後押しが得られた気がするね」

 週末を終え、依然としてスタンディング最上位を守るモンテネグロだが、このラウンドの無得点が響き、ポイント上のマージンが大きく削られることに。12月2~3日に控える第10戦を前に、18歳の背後にはトヨタのラヴァーがわずか9点差に迫る緊迫の状況で最終決戦を迎える。

 そしてグラスルーツが活況のブラジルにて、レースウイーク後のヴェロチッタではルーキーテストが実施され、ハッチバックで争われるコパ・シェル・HB20や、メルセデス・ベンツ・チャレンジのAMGカップに参戦するモデル兼ドライバーのタリーン・チコスキーが、自身初のTCR規定ツーリングカーのステアリングを握った。

「これほどパワフルなクルマをドライブしたことがなかったから、とても良い経験になった」と、まずはリンク&コー03 TCRのインプレッションを語ったチコスキー。「実際、テスト中のパフォーマンスの進歩とTCR車両での可能性にとても満足しているわ」

 同じくリンク&コーのシートをシェアしたフェリペ・ジュンケイラも「これが僕にとってツーリングカーとの初めての接触だった」と、その初セッションを振り返った。

「とくにこのクルマは運転するのがとても楽しく、速くて機敏だから大きな挑戦だった」

「シングルシーターとはハンドリングがまったく違うから、どうやってアプローチしていくかはまだ勉強中だ。テストには非常に満足しており、TCRは素晴らしいクルマで、素晴らしいイベントを提供するカテゴリーであると言わざるを得ないね!」

レース2は選手権首位の18歳イグナシオ・モンテネグロ(Squadra Martino/FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR)がリバースグリッドから出遅れ、トラブルに沈む展開に
「これで次戦の(代替された最終戦)カスカバルに向けて、フレッシュな後押しが得られた気がするね」とレース2勝者オスマン
シングルシーター経験者のフェリペ・ジュンケイラ「このクルマは運転するのがとても楽しく、速くて機敏だから大きな挑戦だった」

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