韓国の公共放送局 ドラマ制作と放送枠縮小が顕著に OTTに押され視聴率低下&予算削減の悪循環、勝機はあるか

韓国の公共放送局(地上波)が、ドラマ制作数を減らしているという。

韓国メディアのインサイトによると、各局はこれまでドラマ枠だった時間帯に、ドキュメンタリーやバラエティーを編成している。

韓国では基本的に、月曜日と火曜日(月火ドラマ)、水曜日と木曜日(水木ドラマ)というように、ドラマ1作品を週に2話ずつ放送することが大半だ。放送話数が日本に比べて多いのは、そのためである。

これを踏まえ、「椿の花咲く頃」「太陽の末裔 Love Under The Sun」などで知られるKBSは、水木ドラマ枠を現状廃止、「ビッグマウス」「赤い袖先」などを生み出したMBCは、水木だったドラマ枠を水曜日のみに縮小、「浪漫ドクター キム・サブ」シリーズや「青い海の伝説」などのSBSは木曜日、金土のみドラマを放送している状態だ。

業界関係者によると、放送中のドラマ後続作が決定していない場合も多いのだという。

韓国ドラマは、現在も海外で多くの人気を集めているにもかかわらず、公共放送局ではドラマ制作が減らされている理由、それは制作費に対して視聴率が思わしくなく、収益性がないためだ。現在放送されているドラマのほとんどが、1ケタ視聴率を記録していることでそれを物語っている。

ここに、莫大な制作費を投じて作品を生み出すOTT市場が参入し、放送局同士の競争が〝放送局 vs OTT〟という構図に様変わり、公共放送局は不振な業績を残す一方となってしまった。

しかもOTTは、テレビではなかなか見ることのできなかったジャンルに挑戦しながら、新鮮さを提供しているという点でも、放送局は負けを喫している。

公共放送局でドラマを制作する場合、審議が厳しいため喫煙、飲酒、暴力、暴言などの表現が容易ではない(OTTは水位調整が自由)。加えて制作費の縮小、財政悪化などのため編成が徐々に縮小され、コンテンツ消費方式がOTTに移行する傾向にあるようだ。

かつて日本で〝韓流ブーム〟のきっかけとなった「冬のソナタ」や「オールイン」「宮廷女官チャングムの誓い」はそれぞれ公共放送局のKBS、SBS、MBCが制作したもの。

現在は視聴ツールの多様化や、制作会社がドラマを作るという環境の変化もあるため、以前のように自社制作での名作ドラマが生まれにくい状況になっている。今後、この現状を打破する一手はあるのか、それとも、衰退の一途をたどることになってしまうのか。

(よろず~ニュース・椎 美雪)

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