コロナウイルス増殖の仕組み解明 弘前大など研究、「第3の新薬」足掛かりに

森田准教授と研究に使ったバイオセーフティーレベル3の実験室

 弘前大学農学生命科学部の森田英嗣准教授らの研究グループは、新型コロナウイルスが増殖する仕組みの一部を解明し、今月中旬に米電子版科学誌「生物学ジャーナル」で発表した。森田准教授は「今ある2種の抗コロナ薬とは異なる、第3の新薬開発につながる成果」と話している。

 森田准教授によると、人間などの細胞に結合したウイルスは、細胞内で自身の遺伝子を増やした後、細胞にある「小胞体」の膜を使って球状の粒子を作り、細胞から出て感染を広げる。

 弘大の森田研究室は、ウイルスが粒子の膜を形成するには、ウイルスが持つエンベロープ(E)タンパク質と細胞内のPDZタンパク質の結合が欠かせないことを発見した。森田准教授は「二つのタンパク質の結合を阻めば粒子は作られず、感染を止められる」と強調する。

 今回の研究は、名古屋大学や大阪医科薬科大学との共同事業。名古屋大チームが二つのタンパク質の結合を阻む化合物を作成中で、大阪医科薬科大チームが実証試験を担う。

 現在、新型コロナウイルス薬には、遺伝子の複製を阻害するタイプと、複製時に働く酵素を抑えるタイプの2種類があるという。森田准教授は「今回の発見から作られる薬は単体でも効果が期待できるし、今ある二つの薬と組み合わせれば相乗効果も出る」と話す。

 今回の研究は、昨年9月に弘大が開設した、ウイルスの流出を防ぐ能力が高い「バイオセーフティーレベル3」の実験室を使った初の成果。森田准教授は「新型コロナのような、感染力や病原性の高いウイルスを扱えるようになった。より高度な研究に取り組める」と話している。

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