切実な劣等感と、あいまいな境界線 「ルッキズム」アンケートに250人の声 見た目より中身?

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 今年5月、ルッキズムをテーマにアンケートを募ると、約250人から回答が寄せられました。ご協力いただき、ありがとうございました。

 周囲の言動がきっかけになり「美しくない」「普通じゃない」と劣等感にとらわれる。鏡に映る自分に嫌気が差す。自由記述の回答欄には、切実な声が並びました。

 今より20キロ太っていたという女性(40代)は「笑いのネタにされ、笑っていましたが、心では泣いていました」と打ち明けました。少しアゴが出ているという男性(30代)は、同僚から「しゃくれ」といじられるたびにツッコミを入れ、なんとか受け流しているそうです。しかし、そのせいでいじる人が増えている気もして、対処に悩む。

 過剰な容姿至上主義には疑問を抱きながら、「身長が低いので女でよかったと思う自分もいる。ルッキズムにがんじがらめなのだと思います」と漏らす女性(50代)もいました。

 元々ルッキズムは1970年代の米国で、太っていることだけを理由に差別を受けた人たちが抗議活動に使った言葉だとされます。「許容され残っている最後の差別」とも言われ、外見差別を禁止する制度が米国の一部の州ではつくられています。

 日本では2020年に俳優の水原希子さんが「世界で最も美しい顔100人」に選ばれ、「(ルッキズムの)助長に加わってしまっているかもしれないと思うと困る」と異議を唱えて注目されました。21年の東京五輪・パラリンピックでは、タレント渡辺直美さんの容姿を侮辱するような演出案に批判が噴出しました。

 日本語では「外見に基づく差別」「外見至上主義」と訳されますが、近年は「見た目で人を判断すること」「容姿に言及すること」など多面的な文脈で使われるようにもなっています。容姿に対する価値観は変わりつつあるのかもしれません。

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 一方で、こういった意見も目立ちました。

 「人を見た目だけで判断するのは良くないと言われ、同意しますが、世間ではそうはいかないのが現実です」(70代男性)、「私は顔がブサイクな方なので、顔で損をしてきたと感じます」(50代女性)。

 外見よりも内面。でも見た目は良いに越したことはないよね-。本音と建前みたいな価値観が私たちの社会にはあって、誰かと自分のまなざしの間で揺れながら、その線引きはあいまいになっています。

 個人的に参考にしたい回答もありました。10代の男性の意見です。

 「見た目から印象を受けてしまうのは仕方ないこと。ただ、それに気付いて立ち止まり修正できるようになれば、もう少し気持ちの良い世の中になると思う」

 私自身、数年前に小柄な友人をいじり、傷つけてしまったことがあります。「冗談やん」と笑ってごまかし、謝ることができませんでした。その反省から取材を始めました。

 体形や髪、顔のパーツなど、容姿にコンプレックスを抱く「当事者」にお会いしました。それぞれの胸の内をお聞きし、神戸新聞のシリーズ「すがたかたち ルッキズムを考える」のコーナーで紹介していきます。

 私たちはなぜ、誰かの容姿にあれこれと口をだしてしまうのか。なぜ、こんなにも見た目が気になるのか。どうすれば、傷つける前に立ち止まることができるのか-。そんな問いについて、みなさんと考えていけるとうれしいです。(大田将之)

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