ポーランドの「ゆがんだ森」は目の錯覚か?心理学者が見解「少数でもインパクトあれば全体のイメージに」

ポーランドには曲がった木が立ち並ぶ森があるという。森を構成する一部の木がゆがんでいるというのだが、どのような理由でそのような状態に至ったのか。あるいは、人間の「目の錯覚」である可能性はあるのだろうか。ジャーナリストの深月ユリア氏が心理学者に見解を聞いた。

◇ ◇ ◇

ピラミッド、ストーンヘンジ、ナスカの地上絵など世界には様々な「ミステリースポット」がある。筆者の母国、ポーランドには世にも不思議な森が存在する。

米国の科学誌「IFLサイエンス」のWeb版ニュースによると、ポーランド北西部の西ポモージェ県グリフィーノ郡にある「クシュヴィ・ラス」(ポーランド語で「ゆがんだ森」という意味の森)の一角には、一部の木が根元で90度曲がって、北に向かって生えているのだという。なぜこのような現象が起きているのか。 「UFOに押しつぶされたのではないか」という都市伝説も噂されている。

筆者の手元には「クシュヴィ・ラス」の曲がった木の写真がある。ポーランド在住の知人が現地で撮影したものだ。その写真を見ると、不思議な森の様子がよく分かる。ちなみに、全体で約3ヘクタールある森の敷地のうち、50平方メートルほどの区画の木々か曲がっていたという。

現地で行われた研究チームの調査によると、曲がった木には切り傷や結び目の跡が見つかっていて、作為的に木が地面に近づいていくよう手を加えられていた可能性が示唆されている。ただし、曲がった木の数は現在わずか100本ほどだという。現地の観光メディア「ポーランド・トラベル」などによると、1970年代には400本ほどもあったが、大部分が枯れてしまったのだという。人為的に手を加えられた木は自然に生えた木より寿命が短いのかもしれない。

つまり、明らかに森には正常な木々の本数の方が多いということになる。それにも関わらず、 「ゆがんだ森」の異名は変わらない、 この森に入ると、たいして曲がってない木も不思議と曲がっているように見えることがあるという。果たして、「ゆがんだ森」には何らかの不思議な力が宿るのか。

心理学者の富田隆氏によると「『ゆがみ』は強調されて認識される」のだという。

「私たちの知覚や認識機能は、日常の体験から影響を受けています。樹木などについても、『多数派』で結果いつも見ている木の形態が『標準』となってしまいます。目の前の木が『多数派』の『標準』とは違っているから『ゆがんでいる』と認識されてしまうのです。そして『ゆがんでいる』木は『少数派』ですから、心理学でいう『図と地の効果』が働いて、多数派の普通の木は『地(背景)』の一部となり目立たなくなるのに対して、『少数派」の『ゆがんだ木』は『図』となり自然に『注目』を集め、強い『印象』を与える(目立つ)ことになります。ですから『ゆがんだ木』は実際には少数であるからこそ、心理的に強い影響、インパクトを及ぼすのです。また、風刺漫画などを見れば分かるように、『標準』とは異なる『特徴』や『ゆがみ』は私たちの主観的なイメージの世界では、実際以上に『強調』されて受け止められ、記憶されます」

「ゆがんだ森」を見たいと期待して行くと、ほとんどの「ゆがんだ木」が枯れてしまっていたので、正常な木も「ゆがんで」見えることがあるのかもしれない。

(ジャーナリスト・深月ユリア)

© 株式会社神戸新聞社