<レスリング>平林るい(SKアカデミー)が優勝…ワールド・コンバット・ゲームズ 2023(サウジアラビア・リヤド)

グラップリング・コーチ=吉澤昌コーチ(SKアカデミー)


サウジアラビア・リヤドで10年ぶりに開催された2023年「ワールド・コンバット・ゲームズ」で、10月23日に実施された「グラップリング」の「Gi」(道着ありの部)に平林るい選手(SKアカデミー)が出場。3試合を勝ち抜いて優勝した。

▲日本選手の女子選手大会第1号の金メダルを獲得した平林るい(SKアカデミー)

試合は、「Grappling」と「Grappling Gi」の男女計10階級で行われ(世界選手権では計26階級)、各階級とも昨年の世界選手権の上位選手、2023年4月にウズベキスタンで開催された予選会を勝ち抜いた選手、ワイルドカードにより選出された選手の合計8選手によるトーナメントで実施。昨年の世界チャンピオンの平林は第1次選考選手としてエントリーされた。

出場者の近年の成績をみると、当然ながら世界選手権やヨーロッパ選手権での優勝者や上位入賞者ばかり。選抜制の大会だけあって、昨年の世界選手権の覇者とはいえ油断のできないメンバーばかりで、厳しい闘いになることは必至の状況。

大会前に最大の難敵と予想していたのは、スペインのマルティンで、2021年には世界選手権も制したベテラン。2022年の世界選手権準決勝で平林との対戦があるものの(平林が判定勝ち)、送り襟締め等のサブミッションも得意としており、簡単な相手ではないだろうと予想された。

抽選の結果、マルティンはトーナメントで反対の山に。平林の1回戦の相手は、本来は1階級上(58kg級)のイェルドスキジ(カザフスタン)。階級が上とはいえ、事前リサーチから体力的な隙があるかもしれないと予想し、開始早々からプレッシャーをかけ、サブミッション(腕十字固め)による勝利。

▲腕十字固めで1回戦を快勝

2戦目(準決勝)の相手はラトクリフ(フィリピン)。近年の世界選手権でのメダル獲得はないものの、今大会の1回戦では、これまでにないフィジカルの強さを見せていた。そのため、テークダウン・ポイントを獲得した後は,ポジションによるポイントを確実に取る戦略をとった。平林は今年に入ってから、レフェリーがコーションを入れる状況やタイミングの研究を重ねており、予想外の力強さで反撃してくるフィリピン選手を完封し、無難な判定勝ち。決勝に駒を進めた。

決勝は予想通り、マルティンが勝ち上がってきた。準決勝でU17世界チャンピオンに苦戦しながらもグランドコントロールで勝利したベテランに対しては、相手の予想の裏をかくモーションを入れながら、テークダウンで2ポイントを先取。ガードワークからリバーサルを狙う相手に対して我慢強くベースをキープしながらプレッシャーをかけ、逆に相手側への「アクション」喚起を引き出した。

ラペラを使ったチョークやリバーサル、足関節技をねらう下からの動きを封じ込め、かつぎからのパスガードに成功。そのままサイドコントロールの3ポイントを追加。その体制をキープしてタイムアップ。点差以上に厳しい試合だったものの、“スタミナ戦”をものにして優勝を決めた。

この時点で日本選手団の金メダルは相撲の1個のみ。本大会の女子第1号の金メダルだった。(写真はチーム提供)

▲決勝で最大の強敵を撃破


【女子Gi53kg級】平林るい(SKアカデミー) 優勝=8選手出場
決 勝 ○[5-0、VBD2]Naiomi Anaiansi MATTHEWS MARTIN(スペイン)
準決勝 ○[4-0、VBD2]Maria Aisa RATCLIF(フィリピン)
1回戦 ○[VBS]Botakoz YELDOSKYZY(カザフスタン)

※VBD2=判定勝ち(相手にポイントなし) VBS=サブミッションによる勝利

【順位】
[1]平林るい(SKアカデミー)=2021年世界選手権2位
[2]Naiomi Anaiansi MATTHEWS MARTIN(スペイン)=2021年世界選手権優勝/2022・23年欧州選手権優勝
[3]Kristina RAU(ドイツ)=2023年欧州選手権3位(58kg級)
[3]Maria Aisa RATCLIF(フィリピン)=2018・23年世界選手権 5位
[5]Soumaya SAFI(フランス)=2022年U17世界選手権 2位(Grappling65kg優勝)
[5]Botakoz YELDOSKYZY(カザフスタン)=2023年世界選手権3位(58kg級)
[7]Tetiana ASTAKHOVA(ウクライナ)=2023年世界選手権3位
[7]Zhenishgul ABDYRAKHMAN KYZY(キルギス)=2023年ワールド・コンバット・ゲームズ予選優勝

※大会成績は、注釈がないもの以外は「Grappling Gi シニア女子53kg級」のもの。

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