<レスリング>U23世界選手権(アルバニア)出場の男子フリースタイル・チームが帰国

10月23日からアルバニア・ティラナで行われているU23世界選手権に出場した男子フリースタイル・チームが10月27日、羽田空港に帰国した。優勝はなかったが、「銀2・銅1」で、国別対抗得点は昨年の8位を上回る5位だった。

2年連続での優勝を目指した86kg級の白井達也(佐賀県スポーツ協会)は、決勝でカデット(現U17)の世界王者の実績を持つアーロン・ブロック(米国)にテクニカルスペリオリティで敗れて連覇はならなかった。

国際舞台だけではなく、ペンシルベニア州立大の選手として全米学生(NCAA)選手権3度優勝の実績を持つ選手。白井は「2028年ロサンゼルス・オリンピックへ向けて最前線に加わってくる選手だと思います。その選手に0-10で負けたことに、あらためて世界の壁を実感しました」と振り返り、銀メダルの喜びはまったくなし。

自分の間合いの中で入ったり出たりがうまい選手で、自分のレスリング技術が通用しなかったことのほか、ひと回り大きな選手で、フィジカル面で大きな差を感じたそうだ。かなりの減量をしていたようだが、闘ったのが2日目の夜で減量から解放されており、それも体力の差を感じた要因。準決勝までは失点を最小限に抑える自分のレスリングができていただけに(4試合の失点合計1点)、残念そう。

この階級は、まだパリ・オリンピックの日本代表の道が残されている階級。12月21~24日の天皇杯全日本選手権へ向けての抱負を問われると、「今のままでは、勝って世界へ行っても、通用しないことが分かりました。短い期間ですが、レベルアップできるよう頑張りたい」と気を引き締めた。

▲メダル獲得選手。左から青柳善の輔、高田煕、白井達也

「もう少しよくなっていた余地のある内容」…米満達弘コーチ

米満達弘コーチ(自衛隊)は「全体として悪くない結果だったけれど、もう少しよくなっていた余地のある内容でした」と振り返る。65kg級の清岡幸大郎(日体大)がリードしていながら逆転フォール負けした試合を「事故」と表現するなど、この試合を筆頭に闘い方次第では勝てる試合があったことに残念そう。「事故が起きるのも勝負の世界です」と言う。

全体として実力がついていることは否定しなかった。優勝した選手と闘って敗れた選手も、「接戦で、ほぼ互角に闘える実力を持っている選手もいました」と言う。その中で、フィジカルの差は感じたそうだ。「体力がそれぞれの階級の基準に達して土台が広くなることで、技術が幅広くなる」と体力づくりの重要性を訴えた。

前田翔吾コーチ(日本オリンピック委員会/クリナップ)は「負けた試合の中には、勝てる試合が多かった」と米満コーチと異口同音の第一声。もう一つを乗り越えられなかった原因が、技術か、体力か、戦術かは、「個人によって違いますが、あとひと工夫で勝てるケースがあった。もったいない成績でした」と話し、日本の実力はこんなものではないことを強調した。


■70kg級2位・青柳善の輔(山梨学院大)「とりあえず銀メダルを取れて、よかったです。決勝の相手のロシア選手は、関節をひっかけるのがうまい選手で、腕を抜くのが難しく、引き込まれて何かを狙われているような感じでした。苦手なタイプですね。今年のヤリギン・カップ(UWW非公認)2位の選手なんですけど、その大会のチャンピオンにはシニアの世界選手権で勝っているんです。相性というか、いろいろあるんだな、と思い、レスリングの奥深さを感じました。

(準決勝で昨年のU23欧州&世界王者を破り)この世代ではトップ近くにまでいっているのかな、という感覚はあります。シニアの世界選手権に出場した経験は、とても生きていると思いました」


■74kg級3位・高田煕(日体大)「メダルを取れたことは、最低限よかったことかな、とは思いますが、負けたので悔しい気持ちしかありません。負けた試合の内容がよくなかった。アメリカ選手特有の動き回って攻撃するタイプの選手。対策はしていましたが、前半はしのげても、後半は崩されてポイント差を広げられました。

敗者復活戦に回ることになって気持ちを切り替え、メダルを取るために気持ちを高めました。1日目より自分らしいレスリングができました。(過去2回の)国際大会は、ともに3位決定戦で負けて5位。今回こそメダルを取る、という強い気持ちがありました。その部分で成長したかな、と思います。

シニアの世界のレベルからすれば、まだ下の方だと思います。その現実をしっかり受けとめ、まず国内で勝てるようにしたい。(74kg級はパリ・オリンピックの代表が内定しているので)5年後のロサンゼルス・オリンピックへ向けて頑張りたい」

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