こんなアリエル見たことない…日本初公開のバンクシー作品が京都に

ドイツ・ミュンヘンの美術館「Museum of Urban and Contemporary Art(通称:MUCA)」の所蔵するアート作品が、現在「京都市京セラ美術館」(京都市左京区)に集結。現実社会に向けた強いメッセージ性を持つアートの数々が間近で鑑賞できる。

日本初上陸作品の『Ariel(アリエル)』2017年 BANKSY(バンクシー)

展示されているのは「MUCA」の得意とする分野である、アーバン・アートと現代アートに特化した作品。アーバン・アートとは、ストリート・アートとスプレー塗料等で壁などに描くグラフィティ文化が結びつき発展したものだ。

今回はバンクシーやカウズなど、アーバン・アートのアイコン的な存在として知名度の高いアーティスト10名にスポットを当て、日本初上陸の作品を含む約70点を紹介。MUCAが誇る世界屈指のコレクションを目の当たりにできる。

同館の小林中副館長は、「開館90周年を迎えるが、アーバン・アートの展示は初めて。まずは見た目のインパクトを楽しみ、作品に込められたアーティストのメッセージに触れて、考えて楽しんで欲しい」と、美しい作品が持つある種の違和感について説明する。

■ 注目のバンクシー、日本初公開作品の大型彫像は必見

注目は、やはり世界に影響を与え続ける正体不明の覆面アーティスト・バンクシーだ。彼のメッセージは、戦争や資本主義、支配者層による権力への乱用に反対するものが多い。同展でも、今まさに事態の悪化が懸念されるパレスチナ問題へのメッセージが込められた『Wrong War(間違った戦争)』や『Palestine Wall(パレスチナの壁)』を観ることができる。

さらに、「腐敗」をテーマにした日本初公開作品の大型彫像『Ariel(アリエル)』にも目が離せない。同作は、バンクシーが荒廃したイギリスのリゾート地で、子どもにはふさわしくない悪夢のテーマパーク「ディズマランド」を企画した時の目玉作品。評論家が「ディズニーランドには夢が詰まっている。そして、ディズマランドは現実を吹き飛ばす」と記したほど、歪んだアリエル像に背筋が凍るだろう。

ほかにも、目が「×」印のキャラクター「コンパニオン」シリーズで人気を博し、ユニクロやナイキとのコラボでお馴染みのKAWS(カウズ)の作品や、世界中の都市の壁にピクセルアートを制作し侵略し続けるフランスの覆面ストリートアーティスト・INVADER(インベイダー)のルービックキューブを使用した作品など、ポップな見た目ながら現代社会へのシニカルな作品が並ぶ。

展示風景。目が「×」印のキャラクター「コンパニオン」シリーズがアイコン的に有名な現代アーティストでデザイナー活動もおこなうKAWS(カウズ)の作品

来日していた「MUCA」館長のクリスチャン・ウッツ氏は、「今世界で起きていること、状況に思いをはせていただける機会になれば」とコメント。多くの作品は、本来、作家自身がミュージアムやギャラリーに展示されることを拒否し、都市の公共空間で制作されたものばかり。同展で観るのは、ある種の矛盾を合わせ持つが、ウッツ氏は「ストリートアートがコンテンポラリーアート(現代アート)に昇華された」と語っている。

『MUCA展 ICONS of Urban Art 〜バンクシーからカウズまで〜』は、「京都市京セラ美術館 新館東山キューブ」にて2024年1月8日までの開催。時間は朝10時〜夕方6時(最終日は夕方5時30分まで)。料金は土日祝が一般2100円、平日1900円ほか。

取材・文・写真/いずみゆか

MUCA展 ICONS of Urban Art 〜バンクシーからカウズまで〜

期間:2023年10月20日(金)〜2024年1月8日(月)
時間:10:00~18:00(最終入場は17:30まで)
料金:一般1900円(土日祝2100円)、大学・高校生1400円、中学・小学生800円
※未就学児は無料
※月曜休(祝日の場合は開館)、年末年始(2023年12月28日~2024年1月2日)

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