筋ジストロフィーと闘う島村さん(16) 全障スポ陸上へ 2年連続の長崎県代表、目指す金メダル

本番に向けて最終調整する陸上スラロームの島村=鹿児島市、白波スタジアム

 特別全国障害者スポーツ大会「燃ゆる感動かごしま大会」(全障スポ)は28日、鹿児島県内各地で開幕する。陸上に出場する島村玲央(16)=長崎県立諫早特別支援学校=は、全身の筋力が徐々に低下する難病「筋ジストロフィー」と闘いながら、2年連続で県代表に選出された。「移動やトイレの時など、いつも気遣ってくれる両親や兄妹に、僕が得意なことをやっている姿を見てほしい」。家族への感謝を胸に本番に臨む。

 ◆車いすの生活に
 幼いころからうまく走れず、何もない場所でよくつまずいていた。成長しても転ぶ回数が減るどころか増えたため、長崎市立矢上小4年時に腕の筋肉を採取して検査、病気が発覚した。コロナ禍でリハビリに通えなかった影響もあって症状は悪化。中学からは特別支援学校に進み、2年時には車いすが必需品になった。
 そんな時、現在も指導を受けている松永健教諭(33)に勧められたのが障害者スポーツのスラロームだった。車いすを操り、赤白のピンが置かれたコースで前進、後進を繰り返して速さと正確さを競う。重度の障害者は電動車いすを使用する。「鍵盤ハーモニカを弾くのが上手。もしかしたら手先の器用さを生かせるのではないか」。松永教諭から背中を押されて新たな挑戦が始まった。
 もともと食べる時間も惜しむほどのゲーム好き。レーシングゲームのように自在に電動車いすのレバーを操作するのは楽しかった。こだわりの強い性格も幸いして、初めて出た昨年5月の県障害者大会で優勝。とんとん拍子に昨年の全障スポ出場が決まった。飛行機で東京へ飛び、新幹線で栃木県の会場へ。「テレビで見た場所に自分がいる」。初めて親元を離れて降り立った都会は刺激的だった。スポーツを通じて華やかな思い出ができた。

 ◆家族へ金メダル
 3人兄妹の次男。別の障害がある兄、太陽(18)=長崎大教育学部付属特別支援学校=、双子の妹の風花(16)=創成館高=がいる。兄妹げんかをしてしかられる日も多いが、母親のあゆみ(42)はそんな日々が、とても心地よい。「お兄ちゃんは玲央を抱っこで運んだり手伝うことで、今では多動が収まった。風花は優しい。玲央を中心に家族が回っている」
 筋ジストロフィーは運動機能が衰えるほか、進行すれば呼吸や発声などにも影響を及ぼす可能性がある。将来、今より自由が利かなくなったり、スムーズに話せなくなったりする日が来るかもしれない。「今しかできない経験をたくさんしてほしい。そして、自分の気持ちを素直に言葉で伝えてくれる玲央とたくさん会話をしたい」。両親はそう願いながら接している。
 29日にスラローム、30日に重さ150グラムの袋を投げる「ビーンバッグ投げ」に出場する。昨年はスラロームが銅、ビーンバッグ投げは銀だった。「去年よりいい記録で1位になれたらうれしい」。長崎から駆けつけてくれる家族へ、金メダルをプレゼントしたいと思っている。
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