弘前高校OBで小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格(みちまさ)さん(63)=ホンダエアクラフト技術顧問=がこのほど、青森県弘前市の同校を訪れ、全校生徒を前に創立140年記念特別講演をして、困難な状況でも諦めず挑戦することの大切さを説いた。
低燃費、大型機に勝る航続距離、静かで広い室内環境が魅力のホンダジェット。小型ビジネスジェット機では世界シェアトップを誇り、米俳優トム・クルーズも愛用している。
同校卒業後に東京大学に入学し、ホンダ入社3年目の1986年からジェット機開発に取り組んだ。ただ、航空機開発は紆余(うよ)曲折の連続。技術的困難や開発経費、プロジェクトに難色を示す会社上層部など数々の壁が立ちはだかった。
藤野さんは主翼の上にエンジンを取り付ける画期的なアイデアで突破口を開いた。米国の航空ショーでも大きな反響が寄せられ、事業化に成功。ホンダのカリスマ創業者・本田宗一郎以来の悲願を達成した。
生徒から質問が相次いだ。日本での普及の鍵を問われた藤野さんは「アメリカでホンダジェットを買う人の資産はおよそ35億円で(ユニクロ会長の)柳井さんほどでなくても買える」が「成田空港の駐機料は年3千万~4千万円ほど。アメリカに比べ維持費が高い」のがネックだと答えた。
講演後の東奥日報の取材では「安全審査のため米当局に提出した資料は200万枚」といい、航空機開発の想像を超える苦労を明らかにした。
藤野さんは2016年に東奥賞を受賞している。