伊王島、高島のカマスをブランド化! 長崎の秋の新定番へ 29日に島内でイベント、料理の提供も

長崎市伊王島、高島両町の近海で日の出の時刻に漁獲される「伊王島日の出カマス」=長崎市高島町沖

 長崎県長崎市伊王島、高島両町の近海で取れる新鮮なカマスを「伊王島日の出カマス」としてブランド化し、地域おこしにつなげる動きが進んでいる。地元の西彼南部漁協(永田直樹組合長)は春先から秋にかけて豊富な漁獲量を生かし、新たな特産品にしようと、29日に開くイベントで「伊王島カマス島宣言」をする。
 25日午前6時半。高島町の漁師、原田浩幸さん(53)は高島港ターミナル(同町)から長崎港に出発する定期船に合わせるように、漁船のエンジンをかけた。少し肌寒さを感じたが、辺りが明るくなり始め、海に出ると、朝日がキラキラとまぶしい。
 大阪府出身。48歳の時、転職を決意し、同町に移住。4年間の漁師研修を経て今年独立し、刺し網漁法でのカマス漁を始めた。
 漁場は南風泊漁港(同町)から東に約10分。伊王島と高島の間で漁船を止め、午前3時半に仕掛けていた全長約560メートルの網を約1時間半かけて引き上げた。体長約30~40センチの細長いカマスを1匹ずつ丁寧に網から外すと、船上で氷締め。この日の水揚げは約170匹(約30キロ)。日の出とともに水揚げし、当日中に出荷するのが「伊王島日の出カマス」の条件だ。
 両町周辺海域でのカマス漁は十数年前からと歴史は浅いが、現在、同漁協所属のカマス漁師は9人(伊王島5、高島4)。昨年の漁獲量(金額)は計13.7トン(約876万円)で、同漁協取扱額の22.6%を占める。漁業情報サービスセンター(東京)によると昨年、長崎で水揚げされたカマスは202トン。千葉県銚子(633トン)に次ぎ2位だった。
 日本列島に広く生息域を持ち、沿岸域で比較的安定的に取れるカマス。白身が軟らかく、干物で食べる機会が多いが、旬の時期は脂が乗り、刺し身でもおいしい。同漁協によると、長崎市の三重、野母崎など他漁協でも漁獲されるが、カマスをブランド魚として押し出すのは、県内で初めての取り組みだ。
 伊王島日の出カマスをお披露目する「豊漁祭」(実行委主催)は29日午前9時から午後3時まで、伊王島町2丁目の沖ノ島漁港で開かれる。カマス料理の提供をはじめ、会場で購入した料理を味わえるクルージング体験(事前予約制、有料)もある。
 伊王島、深堀地区などの六つの飲食店で29日から11月12日まで、伊王島日の出カマスを使った刺し身や天ぷら、一夜干し、フライなどを提供するフェアも開催。豊漁祭実行委員で飲食店「ごはんやさん」(伊王島町1丁目)の店主、小峰雅史さん(37)は「カマスは非常にあっさりしていて、これから脂も乗ってくる。近海で取れる強みを生かして刺し身を売り出したい」とPR。「秋といえばサンマだが、長崎の秋といえば『伊王島日の出カマス』と思ってもらえるよう広めていきたい」と意気込む。

朝日が昇る中、網を引き揚げる原田さん=長崎市高島町沖

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