社説:膨らむ万博整備費 延期、縮小の検討を求める

 事業見通しや計画の甘さにあきれるほかない。2025年大阪・関西万博の会場整備費が、当初予算の1.9倍に増えることが明らかになった。

 開催経費が招致段階の見込みの2倍以上に膨らんだ、2年前の東京五輪・パラリンピックの二の舞いで、さらなる公費投入が避けられない。だが、安易な国民へのつけ回しは許されまい。

 開幕まで1年半を切り、海外パビリオンの建設遅れなど課題は山積し、このまま強行すれば費用の再膨張もあり得る。いま一度、開催計画を精査した上で、延期や事業縮小など大胆な見直しを求めたい。

 万博を運営する日本国際博覧会協会によると、資材価格や人件費の高騰を受け、整備費を527億円増やすとともに、予備費130億円を計上する。一方で会場デザインを見直して157億円を削減し、差し引き500億円上振れして最大2350億円になる見通しという。

 増加分は国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ分担する方針だ。政府は追加負担分を盛り込んだ補正予算案を臨時国会に提出するとみられる。

 共同通信が今月実施した全国電話世論調査で、万博の国民負担増に「納得できない」が75.6%を占めた。開幕への機運が盛り上がらない中、いっそうの公費投入に国民の不信感が増しているのは明らかだろう。

 企業寄付の上積みが可能かも疑問である。

 増額は初めてではない。万博協会は当初、整備費を1250億円と見積もったが、20年12月に設計変更や暑さ対策を理由に1850億円に増額。当時、大阪府の吉村洋文知事は「コストを上げるのはこれが最後だ」と断言したのではなかったか。

 ウクライナ危機や円安による物価上昇といった事情はあっても上振れが大き過ぎる。協会は「想定外の環境変化でやむを得ない」と釈明するだけで詳細は説明せず、無責任極まりない。

 衆院代表質問で、野党議員から「税金投入が続けば、天井知らずの無駄遣いになる」と批判されたのも当然であろう。

 愛知万博を3割近く上回る来場者2820万人を見込むが、この見通しも甘い。運営費に充当する入場料金は大人で7500円と当初予定より割高で、売れ行きが懸念される。収入計画を達成できるのだろうか。

 そもそも大阪にとって万博は「負の遺産」の人工島・夢洲(ゆめしま)を活用するのが狙いだった。開催の是非を問う声も高まっており、万博そのものが新たな「負の遺産」になりかねない。

 統合型リゾート施設(IR)と一体で夢洲開催を推進してきたのは、大阪維新の会が首長を握る大阪府・市だ。巨額の公費投入は維新が掲げる「身を切る改革」とも相いれない。政府と共に責任の重さをかみしめ、軌道修正を図るべきだ。

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