【MLB】 「SNAKES ALIVE」大躍進Dバックスの合言葉 生み出したのは72歳のファン

写真:Dバックス躍進の合言葉「SNAKES ALIVE」

今年のメジャーリーグのプレーオフで最も脚光を浴びているのは、第6シードからワールドシリーズに進出したシンデレラチーム・ダイヤモンドバックスの存在だろう。

ワイルドカード3位のギリギリでプレーオフに滑り込んだDバックスは、ブリュワーズとドジャースという2つの地区優勝チームを立て続けにスウィープで撃破。リーグ優勝決定シリーズでも、第1シード・ブレーブスに勝って勢いづくフィリーズに勝利して、22年ぶりのリーグ優勝を決めた。そして今は、昨日28日(日本時間)から始まったレンジャーズとのワールドシリーズを戦っている。

Dバックス躍進の“合言葉“となっているのが、「SNAKES ALIVE(蛇たちは生き残っている)」というフレーズだ。

ガラガラヘビを意味する球団名から来るチームの愛称と、多くの格上強豪チームと対戦してもなおプレーオフで生き残り続けているという状況がかかっているのだろう。このフレーズは、敵地で2連敗スタートして迎えたリーグ優勝決定シリーズの、サヨナラ勝ちで息を吹き返した第3戦からちらほらと見られるようになってきた。

この合言葉を生み出したのは、72歳の1人のDバックスファンだという。『ジ・アスレチック』のサム・ブラム記者がこの合言葉誕生について取材している。

合言葉の生みの親はジェフ・ガザードさん。72歳でコンピュータの知識も限られている彼は、リーグチャンピオンシップ第3戦の観戦に行く前、横向きの画用紙の真ん中に大きくこのフレーズを打ち込んだ。(もっとも下の余白は大きくなってしまったが)

普通、プロスポーツのチームはこういったソーシャルメディア上で拡散され、球場の横断幕に掲げられるような小粋でキャッチーなスローガンを考えるため、多くの時間を割いている。そのためだけに専門のグループが結成され、クリエイティブのプロすら介入してくる。にも関わらず、「SNAKES ALIVE」の合言葉は、このようにしていとも簡単に作られた。

しかし、この素朴なデザインがウケたのか、ガザードさんがこの紙を掲げている中継の一場面はTwitter(現X)で切り抜かれ、大拡散された。

そして、その第3戦でDバックスが劇的なサヨナラ勝利を決めると、ネット上は「SNAKES ALIVE」という合言葉で溢れた。

さらにその反響を見たDバックスの球団は即座に「SNAKES ALIVE」のレプリカを大量に作り、第4戦では試合前に何百もの座席にこの紙を貼り付けた。

こうして「SNAKES ALIVE」の合言葉はまたたく間に球界に拡散。MLB公式やDバックスの公式SNSアカウントがシリーズ突破の際に使用したことにとどまらず、あらゆる場面で見かけるようになった。守護神ポール・シーウォルドは「SNAKES ALIVE」Tシャツを着て、ワールドシリーズ前のインタビューをこなしていた。

一躍注目の合言葉の生みの親となってしまったガザードさんだが、この合言葉を自分の手柄にしたくないと謙虚な姿勢を崩していない。

シカゴ出身で、仕事のリタイア後に住み慣れたアリゾナに戻ってきたというガザードさんは、熱狂的なDバックスファンを自称はしていない。しかし、これまでもシーズン・プレーオフとDバックスを熱心に追ってきた。球場に足を運ぶときは、たとえ1人でも開場ぴったりに現れ、打撃練習から見に行くほどに野球愛は強い。

大きすぎるサインは他の観客の妨げになるからと、作ったプリントはA4より小さいレターサイズ。そのサイズに作ってもなお、サインを掲げるのはイニング間だけだったというのも、ガザードさんの野球への真摯な愛が窺える部分だ。

トーリ・ロブロ監督ともどもガザードさんのサインを見つけたというジェフ・バニスターベンチコーチは語る。「(この合言葉は)選手たちがシーズン中ずっと持っていた諦めない姿勢を表していると思う。そういう小さい格言やおまじない、それが人を奮い立たせ、翌日も球場へと向かわせる。困難な状況に陥ったとき、ちょっとした道標を与えてくれる」

ガザードさんはアリゾナで行われる第4戦に再び訪れる予定。合言葉の生みの親の前で、Dバックスは再び生き残ることができるだろうか。

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