「学びたい」に寄り添い38年…埼玉で唯一、市民が支える川口の「自主夜間中学校」 入学待機者も20人ほど

川口自主夜間中学の教室は和やかな雰囲気。手前右は数学を教える中野俊夫さん=9月26日、埼玉県川口市パートナーステーション

 市民がボランティアで支える県内唯一の「自主夜間中学校」が埼玉県川口市で開校して今年38周年を迎える。教えるスタッフは市民ボランティア。火曜日夜はJR川口駅前の市パートナーステーション、金曜日夜は幸町公民館で開校している。生徒は外国人が多く、2教室を合わせて中国、ベトナムなど10カ国の約50人。「学びたい人がだれでも無料で学べる」を開設以来のモットーに掲げる。悩みはスタッフが足りないことで、入学を希望する外国人も急増している。

 川口自主夜中は、戦争などで小中学校へ行けなかった未就学者のために1985年12月に開校した。最近は中身も大きく変わり、不登校だったので学び直したいという日本人や、日本語を学びたい外国人も増えている。

 教える側はスタッフと呼ぶ。国語、理科、社会、英語などを担当する約30人。大学生から80歳まで、元会社員や元大学教授など多士済々だ。

 パートナーステーションを訪れた日、教室は生徒とスタッフでほぼ満席だった。ほとんどがマンツーマン指導で、和気あいあいのムード。

 元数学教師の中野俊夫さん(81)はノートを広げた市内の公立中3年生の中国人男子生徒の隣に座り、「高校受験の勉強を手伝っている」。自主夜中で教えた20代の日本人女性が「こんなに親切に教えてもらったことがない」と言って泣いたことがあった。「あの時は教師冥利(みょうり)に尽きると思った。教える喜びを感じた」と振り返る。

 端のテーブルで中国人の姉弟と向き合っていた元小学校長の片貝勝さん(71)は「現役の教師時代に子どもたちと正面から向き合ってこなかったという反省がある。ここでは恩返しの気持ち」。

 教室の南側の端で、小さな中国人女児と笑顔で話していた大学4年生の東海林駿さん(23)は「大学の卒業論文で教える側の問題意識をテーマに掘り下げたいと思う」と語る。

 自転車で通うスタッフの根岸正子さん(72)はベトナム人の小学3年の男子と5年生の中国人女子に教えていた。市立の夜間中学校「陽春分校」の2022年春の卒業生で、進路で迷っていたところ、陽春分校の先生から「ボランティアで日本語を教えたら」と勧められた。「いろいろ探して川口自主夜間中をみつけて飛び込んだ。楽しい学校です」

 「入学希望者にしばらく待ってもらう待機者が出ている。20人ほどが待機中です」と、同校を運営する「埼玉に夜間中学を作る会」の代表、野川義秋さん(75)は言う。

■11月4日に歴史振り返る集会

 川口自主夜中の歴史を振り返り、未来を考える「38周年集会」が11月4日午後1時半、川口駅前のリリア11階大会議室で開かれる。資料代200円。

 問い合わせは、野川さん(電話080.3380.2713)へ。

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