先導ではなく、たすきつないで…「埼玉県警」21年ぶり東日本実業団駅伝出場 来月3日、旧中山道駆ける

彩湖の周りを集団で走る埼玉県警チーム

 普段、治安を守っている地で、県民に全力で駆け抜ける強い姿を―。11月3日に埼玉県庁をスタートして、深谷経由で熊谷スポーツ文化公園陸上競技場にゴールするコース(7区間76.9キロ)で開催される東日本実業団駅伝に、埼玉県警チーム(駅伝特別強化訓練員)が21年ぶりに出場する。36チーム中、上位12チームに出場権が与えられる来年元日の全日本実業団(ニューイヤー)駅伝出場へ、実力的には果てしなく高い壁が立ちはだかるが、選手たちは「県警の警察官が必死に頑張っている姿を見せたい」。地元を疾走できる喜びを胸に、スタートラインに立つ。

■失ったゴール

 県警教養課によると、県警チームが東日本実業団駅伝に最後に出場したのが2002年で、28チーム中17位の成績が残っている。ただ翌年3月に駅伝特練が解散。11年には復活し、05~18年は警視庁や神奈川県警などが参加する関東警察駅伝に出場していたものの、18年を最後に新型コロナウイルスなどの影響で同駅伝も消滅し、目標を失った。

 チームの士気高揚のためにも目を付けたのが“文化の日”の県内の風物詩・東日本実業団駅伝だった。「県内の駅伝なのに先導をしているだけ。駅伝チームもあるのに、走らないのは寂しい」という意見も多く、昨年末ごろから本気で目指す機運が高まった。

 今年2月の埼玉県駅伝一般男子の部で初の3位入賞を果すと選手たちは自信を深め、一気に士気も高まった。そしてチーム上位7人の5000メートルの平均タイムが出場資格となる16分30秒以内をクリア。晴れて出場にこぎ着けた。

■心身ともに向上

 以降、本番に向け駅伝特練の月3回の合同練習以外に、特練の主力を占める機動隊員は勤務後に自主的に集まって走り込んだ。さらに県外への遠征や警視庁との合同訓練のほか、県内の大学の練習に赴く選手がいたり、日頃の自主練から距離を踏むようになるなど、心身ともに向上した。

 駅伝特練歴最長の8年目になる機動隊の畑勇希巡査部長(32)=東松山市出身、東農大三高―東洋大出=は「入った時からの目標で一緒に練習してきた先輩たちも出たいと言っていた。悲願がかなってうれしい」と笑顔を見せる。1区(11.6キロ)を担う特練6年目で機動隊の荒井大輝巡査(28)=東京国際大出=は「21年ぶりといっても、感覚的には初出場と同じ。真っさらな状態から新たな歴史を築いていきたい」と拳を握った。

■未来へのたすき

 選手は泊まり勤務をこなすなど名の知れた実業団チームに比べれば、決して恵まれた環境とはいえず、練習量や実力が及ばないのは事実だ。それでも、元選手の佐藤雄太郎監督(43)=教養課警部補=は「高速レースできついとは思うが粘りに粘り、諦めないで前を追って、たすきをつないでいく警察官の姿を見せてほしい」と期待を寄せる。

 最長の3区(16.5キロ)を走る畑巡査部長は「今は勝てるとか言えるレベルではないが、ゆくゆくは『元日が目標です』と心の底から言えるようなチームになりたい。そのためにも一つ一つを積み重ねていくことに意味がある」と熱っぽく語る。今回は小さな一歩かもしれないが、後に大きな一歩になったと胸を張って言える日が来ると信じて、未来へのたすきをつなぐ。

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