「MR.あおり引っかけ」は左足下がり&低めティアップで自然治癒 レッスンの最前線からLIVE中継

これからお届けするレッスンのやり取りは、感覚論とは無縁の科学目線の世界。最新技術を使ったいまどきのコーチたちのリアルなレッスンの一部始終をレポート。人の振り見て我が振り…直せます。

ベストスコア71という腕前の尾後さん(ゴルフ歴20年/40代男性/平均スコア80前後)

尾後啓太(おごけいた)さんの目標は「平均70台」で回ること。ただし、調子のバラつきがあってショットが乱れることも多く、その際に出がちな「引っかけ」をなんとかしたいと考えいる。

スイング解析で見つけた「引っかけ」の原因

平均スコアなりにスイングのレベルも高いが、そんななかでも改善点はどこにあるか、橋爪輝彦(はしづめてるひこ)コーチがスイング解析を行った。

「尾後さんは、ややアウトサイドに上げてインサイドから下ろしてくるクセがあります。それ自体は問題ないのですが、切り返しでの軌道変更時に少しタイミングが合わないと、ダウンスイングでクラブが寝て、引っかけ系のミスが出るのだと思います。安定感をアップさせるなら、ここを見直していきたいと思います」(橋爪コーチ)

ツアープロ(写真右)と尾後さん(写真左)のインパクトの形を見比べると腰の開きに違いがある

この問題点の原因を腰の回転不足にあると予測した橋爪コーチは、インパクト時の腰の回転量の映像を確認。ツアープロの平均値が「43度オープン」なのに対して、尾後さんは「21度オープン」。この回転不足によって動きが滞ると、フェースが返ってしまう引っかけが出るのだろうという分析だ。

回転不足はダウンスイングで腰の回転が止まってしまうから。これを止めずに最後まで動かし続けることができれば、引っかけのミスも出なくなるはず」と改善点を指摘。「回り続けると、右に体重が残ってスピンアウト(左腰が引けた状態)しそうな恐怖感があります」と不安を抱く尾後さんに対し、「右に体重が残らないような左へのウエートトシフトと、そこから左カカト側に乗っていく感覚があれば、スピンアウトせずに回り切れるはず」と橋爪コーチは背中を押す。

尾後さんは理屈には納得するものの、自分のスイングがほぼ固まっていたぶん、「イメージを変えるのがとても難しい」となかなか再現するのが難しそうだった。

「左足下がりのライ」から打つ練習方法

左足下がりのライから練習することで、スムーズに体重移動と腰の回転が行える

そこで、橋爪コーチが提案したのは、「左足下がりのライ」から打つ練習方法だ。「左足が下がった状態で打てば、自然な左への体重移動を体で覚えられます。練習場のマットの段差などを利用して球を打つことで、意識しなくても体重移動を行えます。その上で左足かかとに乗って腰を回し切る意識が持てれば、徐々に引っかけはなくなってきます」と自然な動きの中での腰の回転を促した。

左足下がりの練習で早くも腰の回転に改善が見られ、インパクト時の腰の回転が「21度」→「23度」と早速効果が表れ始めた。ここで橋爪コーチはレッスンを畳みかける。

低めのティで練習することで、右に体重が残る動きを修正する

続けて「低めのティアップ」での練習を提案。引っかけが出るときは体重が右に残ってスイングがあおりぎみになるのを抑えるための工夫だ。右に体重が残っていては、低いティアップの球は打てない。

さらに橋爪コーチは、「ひとつだけ注意してほしいのは、左に乗ろうとすると尾後さんは右肩が出る傾向があります。ダウンスイングでは上体は少し右に傾けて右肩が下に下がった状態を作ることがポイント」とアドバイスを送る。「ダフりを恐れずに上体は右に倒していきましょう」(橋爪コーチ)と体現するのはなかなか難しそうだが、上を目指す尾後さんにとっては、やりがいのある課題なはずだ。

レッスン後の尾後さんのスイング スムーズな体重移動が行われている

もともとスイングもスコアメークもレベルが高い尾後さん。これで大きなミスが減ってくれば、平均70台はもちろん、ベストスコア更新も期待できるだろう。

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