話題の【所得税4万円定額減税】は支離滅裂?首相所信表明演説から読み解く今後の日本経済

臨時国会が10月20日に召集されました。岸田総理大臣は所信表明演説の中で、今後3年間程度は持続的な賃上げや設備投資を拡大するための政策に集中すると述べました。

また国内の経済の現状について、今年のような高い水準の賃上げや設備投資の動きが続くのであれば、「成長型経済」が可能だという考えを話し、経済対策として「供給力の強化」と「国民への還元」の二つを掲げました。「供給力の強化」は企業への賃上げを促す減税制度の強化や、戦略物資への大型の投資減税などを挙げています。注目される「国民への還元」については、税収の増収分の一部を還元できればと考えている、と語りました。


9000万人弱に4万円の所得税減税

その後岸田首相は26日に政府与党政策懇談会を開き、1人あたり所得税3万円、住民税1万円、合計4万円をそれぞれ定額で減税することを発表しました。減税は法改正を経て2024年6月に1回限りで実施するとしています。扶養する家族がいれば、人数分の減税も受けられます。4万円分の減税を受けられるのは9000万人弱で総額約3.5兆円となる見込みです。次に所得が少なく住民税も所得税も課税されていない世帯には7万円を給付します。すでに3月に決定している物価対策で3万円を給付していて、合算すると1世帯あたり10万円の支援です。約1500万世帯が該当すると見込まれています。

また、住民税が課税、所得税が非課税の人にも世帯あたり10万円を給付する案が出ていて、住民税と所得税の納税額が4万円より少ない人には差額を給付することが検討されています。これらに該当するのは計約900万人と見込まれています。

今回の還元・給付に関する内容は2023年度補正予算案に盛り込むとしています。これらの対策により物価高が続いている現状に対して負担を緩和したい考えです。

所信表明演説ではその他に、ガソリン価格を抑える補助金、電気・ガス料金の負担軽減措置を来年春まで継続すること、低所得者の世帯への給付措置に使われている「重点支援地方交付金」を拡大することなどを挙げています。

今回の減税は突発的?

日本では過去にも一度、経済対策として所得税の定額減税が行われています。1998年の橋本内閣時に一律3万8000円の控除、扶養家族がいる場合は1人当たり1万9000円の控除も行われました。当時はアジア通貨危機や山一証券の破綻を背景に日本経済がドン底の時期でした。そのような経緯と照らし合わせると、今回の減税は突発的に出てきたようにも感じます。

一方、防衛費増額や少子化対策など重要政策の財源論は置き去りとなっています。政府は防衛力の抜本的強化を目指し、防衛費を今年度から5年間で43兆円確保するとしています。増加分の一部は、法人税、所得税、たばこ税の増税でまかなうとしています。増税の具体的な実施時期はまだ決まっていません。

また、少子化対策では、今後3年間をかけて年間3兆円台半ばの予算を確保することとし、財源について、政府は、「支援金制度」の創設と、社会保障費の歳出改革などでまかなう考えで、詳細は年末に発表される予定です。

減税で恩恵を受ける企業も?

多額の財源を確保するための増税と一時的な減税を行うのは支離滅裂だと、自民党内からも批判の声が上がっています。減税には誰もがありがたく恩恵を賜りたいと思うはずですが、これが内閣の支持率回復の狙いのためで、将来更なる重い増税が待ち受けているのであれば本末転倒です。

但し、減税によって恩恵を受ける業種もありそうです。ホテルや鉄道、家電、百貨店、アパレル、外食、食品関連などです。貯蓄だけではなく消費に回る事に期待したいと思います。 また来年は新NISAが開始されるので株式投資を始める方もいらっしゃるかもしれません。

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