せっかくの投資が残念なことに…【新NISA】でハイリターンを求めて犯しがちなミス6選

投資は、経済的に豊かな未来を形作る一つの手段です。来年から始まる新NISAは現行のNISAに比べて非課税保有期間が無期限となることや、投資可能期間も恒久化するなどメリットが大きく増えました。新NISAを利用して資産を増やし、将来の資金計画を立てようと考えている方も多いのではないでしょうか。今回は、新NISAにおいて初心者がするべきことや、犯しがちなミスについて説明します。


自由度が高くなる分難易度も高くなる新NISA

投資によって、企業は資本を得て成長し、経済の活性化が期待できます。投資は私たちの生活や社会全体にとって重要な役割を果たしているのです。

しかし、投資にはリスクが伴います。リスクとは、予想外の出来事の結果、投資した資産が減少する可能性を指します。新NISAは自由度が増したことで活用の幅が金額と共に広がった分、投資の難易度も高まったともいえます。例えば新NISAで株式に投資する場合は株価の変動により投資額が増えることもあれば、減ることもあります。そして、その変動は企業の業績、政治的な出来事、自然災害などの多くの要因によって影響を受けます。

初心者投資家が特に理解しておくべきなのは、リスクとリターン(投資から得られる利益)は表裏一体である、という原則です。

一般的に、リターンが高い投資ほどリスクも高く、逆にリスクが低い投資ほどリターンも低いとされています。高い利益を追求することは、高いリスクを受け入れることを意味します。逆に、安全を重視するなら、リターンもそれに応じて低くなります。このバランスを理解し、自分自身がどれだけのリスクを受け入れることができるのか(リスク許容度)を把握することが、賢明な投資を行ううえでの第一歩となります。そして、そのリスク許容度に応じた投資戦略とポートフォリオを組むことで、リスクとリターンを適切にバランスさせ、長期的な資産形成を実現していくのです。

以上のことを押さえていただいたうえで、ここからは新NISAにおいて初心者がするべきことや、おかしがちなミスについて説明いたします。

(リスクについては、連載の前回「ポートフォリオ作りに役に立つ!主要な投資リスクとヘッジ方法【通貨・流動性・インフレ・政治リスク編】」と前々回「投資の基本!知っておきたい主要リスクとヘッジ方法【市場・信用・地政学リスク編】」で紹介しましたのでご参考ください)

【1】始める際に制度をきちんと調べない

まずは制度をきちんと理解する必要があります。新NISAには投資の売買益や配当などの利益が非課税となるメリットがあります。ただし無制限の非課税投資ができるわけではありませんので、年間の投資上限金額や対象商品を正しく理解しないまま投資を行うことはリスクとなります。

また利益に対しては非課税は大きなメリットですが、利益が出ない場合には特にメリットはありません。利益を出すことが前提であるということは押さえておきましょう。新NISAについて正確な制度理解をするためには、まず金融庁のホームページをご自身でチェックすることをお勧めします。また、「MONEY PLUS」でもたくさんの方が説明されていますので、あわせて参考にしていただきたいと思います。

そのうえで、新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の違いと特徴をしっかり理解をして、それぞれの枠をどう使い分けるべきか戦略を立てることが重要でしょう。

【2】今年に現行NISAで口座を作ったのに今年の非課税枠を使い切らない

今年中に現行のNISA口座開設を開く方が押さえておきたいことは、今年のNISA口座の非課税枠は今年中に投資する必要があることです。

せっかく今年中に口座を開いても非課税枠を使わないと次の年に引き継げませんのでご注意を。1年間にいくら投資できるのか年単位で計画を立てて、今年の分の余裕資金がある方は上限を確認しながら投資しましょう。2023年末までのNISA枠で日本株に投資する場合は12月27日(水)までに購入しましょう。

そして課税口座(特定口座や一般口座)で購入した株などは後からNISA口座に移すことはできませんので、NISAの非課税枠を使いたい株はまずNISA口座の開設をしてから買うことも覚えておいてください。

また現行のNISAは期限があることも要注意です。つみたてNISAは年間40万円で非課税になる期間が20年、一般NISAは年間120万円で非課税期間が5年です。

【3】情報収集をおろそかにする

賢明な投資を行うためには、十分な情報収集と計画をもって投資を始めること、そして、定期的に投資の見直しを行うことが大切だといえます。

投資する商品について、信頼できるソースから投資情報を得ることも重要です。企業の財務諸表、信頼できる報道機関・公的機関の発表などがこれに該当します。情報は一つのソースだけでなく、複数の視点から集めることが望ましいです。異なる分析や意見を比較することで、よりバランスの取れた判断ができます。また株価など商品の金額はリアルタイムで変動しますので、最新の情報を得ることが重要です。

【4】ハイリターンを求めるあまりリスクを軽視

戦略を立てる上では、リスク管理についてしっかり考える必要があります。初心者は、高いリターンを追い求めるあまり、リスクを過小評価しがちです。しかし、投資金額や商品の選定には自身のリスク許容度を考慮するべきでしょう。

まずは資金面ですが、余裕資金で始めるのが原則です。いきなり全力で始める方がいらっしゃいますが、避けた方が良いでしょう。

また高いリターンに惑わされて商品内容を見ないケースも見られます。投資信託の運用報酬など、投資商品のコストを軽視すると、運用結果がコストに飲み込まれる可能性もあります。コスト面もしっかりと確認し、そのコストが適正であるかを評価することもポートフォリオのパフォーマンスに直結します。

過去の実績に基づいて将来のパフォーマンスを予想し、パフォーマンスが良かった投資信託などに投資を行うことも実はリスクとなります。過去の実績は将来のものを保証するものではないので、あくまで参考であると考えることが必要です。

手数料の高い商品に投資してしまう、値動きが想定より激しい商品に投資してしまう、パフォーマンスが思惑と大きく異なる結果となることなどを避けるためにも、あらかじめどのような商品に投資したいのか考えて目論見書をしっかりチェックして商品内容を把握してから投資するようにしましょう。

【5】特定の銘柄への集中投資

集中投資することもできれば避けた方が良いでしょう。投資可能な全資金を一点に投じてしまうと、その商品に関連するリスクが高まります。分散投資を心がけてリスクを軽減する策を講じることが大切でしょう。ETFや投資信託で分散投資することも選択肢になります。

特定の業界や企業の株にばかり投資をすることで、該当する分野に特有のリスクに大きく影響される可能性がありますので、投資をする際は投資先に偏りがないかもチェックしましょう。

NISA口座と通常の口座(一般口座)を持っている場合、それぞれの口座内での投資の収益や損失を合算することはできません。つまり、NISA口座内で利益を上げても、一般口座で損失を出しても、それらを相殺することはできないのです。具体的な例を考えてみましょう。

NISA口座で100,000円の株式を買って、1年後に120,000円で売却して20,000円の利益が出ました。一方、一般口座では50,000円の株式を買って、1年後に40,000円で売却して10,000円の損失が出ました。

この場合、NISA口座の利益と一般口座の損失を合算することはできず、それぞれの口座内での収益や損失は独立して計算されます。NISA口座の利益は税金がかからない一方で、一般口座の損失には税金の軽減などはありません。つまり、投資家はNISA口座と一般口座を別々に管理し、それぞれの利点やルールを理解して資産運用を行う必要があります。損益通算は口座間では行えないため、注意が必要です。その点でもNISAの非課税枠の投資戦略はNISA口座内でどうするか考えた方がよいでしょう。

【6】短期の成績に一喜一憂し頻繁に売買する

思惑と外れた時に恐怖心からすぐに売ってしまうなどの行動もよく耳にします。新NISAでは初心者の方は長期投資を考えている方が多いのではと思いますが、長期で投資しようと考えていたはずなのに株価の短期的な動きに一喜一憂し、頻繁に売買を行うことで、手数料が増えてしまったり、大局的な視点を失った投資となる可能性があります。

こうした行動を避けるためには、始める前に投資戦略や目的などをマインドセットすることが大切です。市場は時に感情に動かされます。投資家心理や、市場の恐怖や欲望がどのように株価に影響するかを理解することは、冷静な判断を下すうえで重要です。

みなさまの投資の参考に少しでもなれば幸いです。

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