小川原湖(青森県)目立つ水質悪化 汚濁物質含む塩水層が拡大、魚介類へ影響懸念

水産資源が豊富で「宝湖」と呼ばれる小川原湖=9月、東北町船ケ沢地区

 シジミやワカサギ、ウナギなど、水産資源が豊富で「宝湖」と呼ばれる小川原湖(青森県)の水質悪化が目立っている。水の汚れ具合を示す化学的酸素要求量(COD)は、湖沼A類型の同湖では1リットル当たり3ミリグラム以下が環境基準だが、近年は水深0.5メートルの上層でも同4ミリグラムを超す年が多くなり、2022年は同6.4ミリグラムにまで上昇。魚介類の生息への悪影響も懸念される。

 同湖を管理している国土交通省高瀬川河川事務所のまとめでは、01年の同3.0ミリグラムを最後に、環境基準を超過。過去5年間では18年が同3.8ミリグラム、19、20年が同4.2ミリグラム、21年が同4.6ミリグラム、22年は同6.4ミリグラムだった。

 同事務所の土田昭夫副所長は「近年、(CODの)数値は落ち着いていたが、ここ2年は高い」とみる。

 湖は一般に水の出入りが悪いため、流入した汚濁物質は湖底に堆積する。同事務所によると、太平洋からの塩水が遡上(そじょう)する汽水湖の小川原湖では近年、塩水侵入量が多く、汚濁物質を含んだ下層の塩水層が範囲を広げているという。

 このため、上層の淡水層との境界(塩淡海面)の位置が上昇。風で湖水がかき混ぜられ、淡水層へ供給される汚濁物質の量が増加。汚濁物質には、海からさかのぼってきた物質や、主に川から流入したリンや窒素などが含まれるが、このうち、リンや窒素を栄養源とする植物プランクトンも増加しているのがCOD上昇につながる要因の一つとみられるという。

 ただ、土田副所長は「水質悪化の決定的な要因はなく、家庭からの排水、上流域の畑からの農薬の流出などを含めたさまざまな事象が絡み合って発生している」と推測。その上で、漁業への影響については「富栄養化により、植物プランクトンが増え、アオコなどが発生して酸欠が生じ、魚の成長を阻害しているのでは」との見方を示す。

 このため、同事務所は水環境の改善に注力。昨年秋に完成させた「ウエットランド」は、砂土路川の河口部に沈砂地を設けて、水中に浮遊する汚濁物質を沈降させ、たまったら取り除く。一方、上流から流れてきたヘドロに砂でふたをして、窒素やリンが溶出するのを防ぐ「覆砂」を18年に試験的に施工。植物プランクトンの増殖や栄養塩の溶出を防げたことから、今年秋から本格施工する。効果を見ながら、来年度以降も継続する方針だ。

 土田副所長は「劇的に水質が改善するという方策はないので、地道にやっていくしかない」と語った。

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