元従業員が証言「危険な物質という認識はないないない、まったくない」工場敷地内で発がん性可能性の「PFAS」高濃度で検出 地元で説明会…住民「現状を早く掴んで」

静岡市清水区の工場で、元従業員の血液や敷地の周辺などから、発がん性の可能性があると指摘されている有機フッ素化合物=「PFAS」が高い濃度で検出されていたことがわかりました。不安の声が上がる中、工場側は10月30日、地元住民向けの説明会を開きました。

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静岡市清水区三保にある化学工場「三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場」では約10年前まで、「PFAS」の一種、「PFOA」が使用されていました。

そもそも「PFAS」とは、最低でも4700種類以上あるとされている有機フッ素化合物の総称です。このうちの「PFOA」や「PFOS」は、血中濃度が高くなると発がん性のリスクがあると指摘されています。

「PFOA」や「PFOS」は水や油をはじき、熱に強いことからフライパンや泡消火剤、撥水スプレーやハンバーガーの包装紙など、かつて、わたしたちの生活の身近なところにも使われていました。

現在は輸入や製造が禁止されています。この工場では元・従業員の血液や工場の敷地外から高いPFAS濃度が検出されていましたが、その事実が長年、知らされていなかったとして、元従業員やは疑問や不安を抱えています。

アメリカで「PFAS」の裁判を担当する弁護士が入手したという「三井・ケマーズフロロプロダクツ清水工場」で、2008年から2010年の間に従業員24人に実施された血液検査の結果が記された文書によると、24人全員の従業員から高濃度の「PFOA」が検出されていて、中には、アメリカで健康被害のリスクがあるとされる指標の418倍の値が検出されていた従業員もいたとされています。

SBSは、かつてこの工場で40年余り勤務していた男性に話を聞くことができ、当時の作業状況が見えてきました。

<元工場従業員>
「この『PFOA』、わたしたちはCー8と呼んでいたんですけども、12年間は扱っていた」

男性は当時、「テフロン」と呼ばれるフッ素樹脂の製造を担当し、「PFOA」を素手で扱っていたといいます。

<元工場従業員>
Q危険な物質だという認識は?
「ないないない。まったくない。上の人もまったくないから放置していたんでしょうね」

当時、健康被害は確認されませんでしたが、男性は2年前に舌がんを患いました。「PFOA」との関係性は分かっておらず、男性はもどかしい思いを漏らします。

<元工場従業員>
「中に入った『PFOA』が悪さをして、どこかをがん化していってることも否定はできないと思う。そこの因果関係がハッキリしないだけに、…だから今回の件も何ともいえないなと思っている」

影響は工場の外にも出ています。SBSが入手した別の文書によりますと、工場側が2002年に実施した周辺の地下水の調査では、敷地外の側溝から国が示す暫定目標値の6120倍もの「PFOA」が検出されていたことも分かりました。

<難波喬司静岡市長>
「事業所も排水から基準値を超える濃度が確認されていると、地下水からもその濃度が検出されていると聞いています」

静岡市はこうした事態を受け、すでに進めていた河川や水路の水質調査に加え、工場周辺の井戸5か所で地下水の調査を行ったと明らかにしました。周辺地域への影響が心配される中、地元の自治会長は早急な現状把握を求めたいと話します。

<清水区三保地区連合自治会 櫻田芳宏会長>
「現状を早く掴んで頂きたい。そして、その影響がどの程度あるのかと。変な風評被害にならないようにして頂ければありがたい」

三井・ケマーズフロロプロダクツは、SBSの取材に対し、これまで清水工場の社員から健康被害は出ていないとしたうえで、今後、OBを含めた従業員に対し、健康調査や血液検査を実施していくとしています。

30日夜行われた説明会では、あらためて、過去の使用状況の話があったうえで、工場と自治会、さらに静岡市の三者による連絡協議会を作ることが新たに決まったということです。

説明を聞いた清水区三保地区連合自治会の櫻田芳宏会長は「連絡協議会ができたことはよかった。早く不安を払拭できれば」と話していました。

いずれにしても周辺の住民が安心して生活していくために、1日でも早い現状把握と対策が求められます。

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