最終戦で初優勝の太田格之進、ルーキーイヤーの監督評価は“50点”「こんなに速いとは思わなかった」

 10月29日、三重県の鈴鹿サーキットで行われた最終第9戦では、2023年の全日本スーパーフォーミュラ選手権に4人目のウイナーが誕生した。シーズンは第8戦まで、ランキング上位3名の宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)、リアム・ローソン(TEAM MUGEN)、野尻智紀(TEAM MUGEN)が勝利を分け合ってきたのだが、トップ3の牙城を崩したのは、今季スーパーフォーミュラにデビューを飾ったルーキー、太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)だった。

■「予選での速さは、自分でも疑っていません」

 太田は2019〜21年にFIA-F4を戦い、2022年に全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権にステップアップ、ランキング2位を獲得した。スーパーフォーミュラには、2022年末、鈴鹿で行われたルーキーテストに参加し、その後DOCOMO TEAM DANDELION RACINGからのデビューが決まったものの、スーパーGTのテストでクラッシュに見舞われ、開幕前の公式テストを欠席。さらに迎えた第1・2戦は悪天候の影響で金曜フリー走行がキャンセルとなり、第1戦予選が新型車両SF23での初走行となるなど、バタバタのデビューとなっていた。

 マシンに慣れる機会も少なく、第5戦まではノーポイントが続いた。しかし、その直後に行われた富士スピードウェイでの公式テストから調子が上向き、第6戦以降は安定して上位に食い込む速さを見せるようになる。後半戦に入ってから、ことあるごとに太田はこの富士テストでさまざまなセットアップを試せたこと、そしてマシンへの習熟が進んだことが大きかったと強調していた。

 迎えた最終戦では、2番グリッドから好スタートを決めてトップで1コーナーに入ると、最後まで背後のローソンを寄せ付けず、実質のトップを守り切って完勝。チェッカーを受けた瞬間、太田は涙を流した。

 レース後、太田は課題としていたレースでのマネジメントが成功したことに、自らの成長を感じていると語った。

「MUGENやTOM’Sなど、一年を通じてレースペースが強いクルマを抑え込んで、1周目から一度もトップを譲らずに終えられたという部分では、自分のなかで課題だったタイヤのマネジメントなどの面で、1年間で本当に成長できたところだと思うし、来年の決勝に向けた自信になると思います」

 そして、最終2連戦では4番手と2番手に入った予選に関しては、さらに手応えを感じているようだ。

「自分で言うのもなんですけど、予選の速さは自分でも疑っていません。昨年のライツでも全コースでポール獲りましたし、今年も後半戦は常に上位にいます。今日の予選Q2ではポール獲れそうだなと思いながら出走して、最終コーナー回ってきたときにも『獲っただろう』と思っていたのですが……『さすがF1ドライバー』と言いますか、ちょっと(ローソンに)邪魔されたのですが(笑)、予選に関してはとくに自信を持っているので、来年は(予選・決勝)どちらでも強いところを見せられたらなと思います」

2023スーパーフォーミュラ第8戦&第9戦鈴鹿 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)

■無線でも終始冷静。初めての状況にも適切に対応

 表彰台の頂点に立った太田を見上げた直後、6号車のエンジニアも兼務する吉田則光監督は「今週ずっと速かったですよね。決勝ペースも良かったし、スタートも良かった。あんなに速いとは思いませんでした(笑)」と鈴鹿2連戦を振り返った。

「やはり富士のテストあたりからやっと本人も慣れてきて、タイヤの使い方が分かってきて、良くなったという感じです。富士のテストで(牧野任祐の5号車含め)2台でいろいろと試せた。分岐点はそこでしたね。SF23にクルマが変わり、アイデアはいろいろとあっても、試す機会がそこまでは少なかったですから」

 結果、「第3戦とは全然違う」(吉田監督)クルマで臨んだ最終2連戦では、“トップ3”を上回る速さと強さを見せるまでに至った。なお、トップを守り続けたレース中、太田は無線でも終始冷静だったという。ピットアウト後にステイアウト組に追いついてしまうという「初めての状況」(太田)にも、オーバーテイクシステムを使いながら適切に対処し、背後のローソンに隙を与えなかった。

「FIA-F4でもスーパーフォーミュラ・ライツでも、そこまで目立つ存在ではなかったように思います。なので、こんなに速いとは思わなかった」と太田について振り返る吉田監督に、ルーキーシーズンを通した100点満点での採点を聞くと、「どうですかねぇ。最後は良かったですけれど、50点くらいじゃないですか。まだまだですよ」とやや辛口とも取れる評価。

 裏を返せば、それは太田のポテンシャルの高さを認めているからこその、ハードル設定の高さなのだろう。2年目となる2024年には、どんな戦い方を見せてくれるのか。そんな期待を抱かせる後半戦、そして最終ラウンドだった。

表彰台で握手するリアム・ローソンと太田格之進 2023スーパーフォーミュラ第9戦鈴鹿 

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