火災事故で2台の『ランチア・デルタ』を消失したチームが、改めてFIAの対応を非難/WorldRX

 最終戦の地として11月12~13日に、香港はセントラル・ハーバーでの初開催イベントが控えるWorldRX世界ラリークロス選手権だが、シーズン第4戦となった7月のイギリス・リデンヒルで発生した車両火災により、所有するRX1e車両『ランチア・デルタEvo-e RX』の2台が全焼する事態に陥ったスペシャル・ワン・レーシングが「焼損事故とその余波に対する対応の甘さ」を指摘、改めてFIA世界自動車連盟とシリーズプロモーターの双方を批判する声明を出した。

 金曜走行開始前のパドックで発生した火災により、フランスを拠点とするチームは年内の活動が不可能となっただけでなく、シリーズ全体も選手権の保留(電動最高峰クラス”RX1e”の開催休止)と代替案の採用(ステップアップシリーズであるFIA RX2e選手権で使用する電動ワンメイク車両『ZEROID X1』の使用)を余儀なくされた。

 フリースタイルスキーの元世界王者、ゲラン・シシェリ率いるスペシャル・ワン・レーシングは、先週木曜に発表した声明のなかで、火災の原因を指摘し「さまざまな証言や監視カメラの映像、遠隔測定データ、瓦礫から採取したサンプルに基づく専門知識により、火災の原因は熱暴走であることが決定的に証明された」と、その火元がRX1eの共通部品に指定されるリチウムイオン・バッテリーであることを指摘した。

「すべてのRX1eモデルに、カテゴリー共通の同機器サプライヤーであるクライゼル・エレクトリック社は、このような事件、事故が将来再発しないことを保証できないでいる。したがってFIAは、追って通知があるまでこれら車両の競技再開を許可しないことを決定した」と声明は続く。

「この状況が続けば、関係者全員の幸福を損ない、この分野の将来を危うくする結果を招くことになるだろう」

WRC世界ラリー選手権“9冠”のレジェンド、セバスチャン・ローブを擁して新規参戦を果たしたSpecial ONE Racing
チームは「焼失事故とその余波に対する対応の甘さ」を指摘、改めてFIA(世界自動車連盟)とシリーズプロモーターの双方を批判する声明を出した

■香港ラウンドへ招待されるも、辞退した旨を報告

 そのFIAとWorldRXを運営するラリークロス・プロモーターGmbHは、火災直後に原因の調査を開始したが、火災が始まって以来、いまだ重大な最新情報は得られていない。

「本日、スペシャル・ワン・レーシングはFIAやクライゼル・エレクトリック社から公式な分析レポートや結果が提供されていないことを遺憾に思う」とリリースは続ける。

「今日まで、チームが3カ月前に経験した火災の責任を負おうとする人物は誰もいないようだ。この『敬意の欠如』は、チームやそのパートナーが前進することを妨げる」

 その上で、チームはシリーズから提供される2台の『ZEROID X1』を使用し、香港での最終戦に出場するよう招待されたが、事件への対応の結果としてこれを「辞退する」と発表した。

「これに関連し、当然の帰結として11月11日と12日にRX2e用車両で香港のイベントに参加を要請するというプロモーター側の招待には断りを入れたことも記しておく」

 それでも現在、チームはカムバックへの門戸を開き、火災に対するチャンピオンシップ側の次のステップが判然とすれば、ふたたびシリーズに復帰する可能性があることを示唆した。

「2024年シーズンが近づくなか、我々スペシャル・ワン・レーシングは過去の出来事の原因に関する答えを得ることを切望しており、チームが来季さらに優れた『ランチア・デルタEvo-e RX』でチャンピオンシップを再開できるようにするための保証を求めている」

「今日まで、チームが3カ月前に経験した火災の責任を負おうとする人物は誰もいないようだ。この『敬意の欠如』はチームやそのパートナーが前進することを妨げる」とチーム
2台の”再建”という難題に加え、シリーズが今後どのように立ち直れるかを注視する必要もある

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