黒崎煌代さん、NHK朝ドラ「ブギウギ」で俳優デビュー 母校で少年時代の思い出や秘密の趣味を明かす 兵庫・三田

インタビューに答える黒崎煌代さん

 北摂三田高校(兵庫県三田市)出身の黒崎煌代(こうだい)さん(21)が、放送中のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」で俳優デビューした。亀好きでおっとりとした主人公の弟「花田六郎」役をみずみずしい感性で演じている。このほど母校を訪れた際に、少年時代の思い出や俳優になるまでの道のりなどを聞いた。(尾仲由莉)

 黒崎さんの父親は米国で映像関係の仕事をしていた時期があり、自宅には洋画のDVDや映画関係の本があふれていた。小さい頃から映画が身近で、初めて見たのは「スター・ウォーズ」。王道のSF映画に衝撃を受け、自身が生まれる前の作品も含めて数多くの洋画に触れてきた。

 親にも隠してきた趣味があるという。好きな作品の俳優の演技をして遊ぶことだ。服装も似せて鏡の前で表情やせりふをまね、俳優になりきる。小学生の時から10年以上続けてきた。

 「人生最高の映画『ラ・ラ・ランド』は繰り返しまねています。(ヒロインの)エマ・ストーンもまねます」

 北摂三田高校に進むと、その趣味に相棒ができた。同級生の友人は脚本を書くことも好きで、高校3年間は映像制作にのめり込んだ。文化祭ではクラスメートら十数人を巻き込んで20分ほどのサスペンスドラマを制作。発表会では最優秀賞を受賞した。

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 「映画に関わって生きていきたい」。高校生活の間に心は決まっていた。大学は映像関係の著作権を学ぼうと法学部に進学。CGなどの勉強も独学で進めた。

 あるときインスタグラムを眺めていると、芸能事務所「レプロエンタテインメント」の役者オーディションが目に留まった。合格者への特典は1年間の演技の勉強だった。当時考えていた進路は映画の作り手側だったが、「演者の思いも知りたい」と応募した。

 オーディション自体に8回のワークショップがある点も魅力的だったという。「演技のワークショップってめっちゃお金がかかるんです。それが無料で受けられる。最初はむしろワークショップ目当てでした」

 約5千人が応募したオーディションの最終選考に合格したと連絡が来たのは、横浜で友人と遊んで帰りのバスを待っているときだった。「手が震えて、今まで出したことのないような声が出たことだけ覚えています」。すぐに両親に電話した。父も初めて聞くような大きな声で喜んでくれ、母は少し心配していた。

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 昨年5月、事務所による演技の勉強が始まった。同時並行で映画やドラマのオーディションを受けた。事務所に入って初めて受けた映画「さよならほやマン」(11月3日公開)のオーディションで、主人公の弟「阿部シゲル」役を勝ち取った。黒崎さんの映画デビュー作となった。

 黒崎さんが演じたのは生まれつき障害のある青年。「障害がある人っぽく演じるのだけは絶対にやめよう。なぜそういう動きになるのかを追求しよう」と心に決めて臨んだ。昨年10月の現場入り前には、自閉症の作家東田直樹さんの本「自閉症の僕が跳びはねる理由」や、登場人物やストーリーに共通点のある映画「ギルバート・グレイプ」などでイメージを膨らませた。

 朝ドラ出演もオーディションで決まった。出演が決まってからは、朝ドラを少しでも勉強しようと「舞いあがれ!」や「らんまん」を見て研究。最初の現場入りは「死ぬほど緊張した」と振り返る。

 六郎を演じる上では自分の性格も生かしたという。「六郎はバカ、アホだと言われているが、バカだと思って演じるのは違うと考え、六郎はただピュアなんだと考えるようにした。自分もピュアだとよく言われるし、好奇心の強さも演技に生かした」。さらに、「六郎は亀が好きでいつも亀と一緒にいるから、亀っぽく首が出ているような姿勢を意識した」といたずらっぽく笑う。

 現場では、監督から「緊張しないで自分の思うようにやっていいよ」と声をかけてもらったり、出演者らとご飯を食べに行ったり、すぐになじむことができたという。主人公・鈴子役の趣里さんはとにかく優しく、「『六ちゃんが六ちゃんで良かった』と言ってもらったときは最高でした」。

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 今年10月、黒崎さんは母校や小さい頃からよく訪れていたウッディタウンの映画館など市内約20カ所を訪れ、「ブギウギ」と「さよならほやマン」をPRした。

 北摂三田高校では、担任の先生だった木南林太郎教諭(51)と久しぶりに再会した。2人は「1年生の時の面談ではアナウンサーになりたいと言っていた」などと思い出話に花を咲かせた。サインを贈られた木南教諭は「黒崎からサインをもらう日が来るとは思わなかった」と照れ笑い。学校にサインが飾られると聞いた黒崎さんも「うれしい」と跳び上がって喜んだ。

 ふとしたきっかけで応募したオーディションから1年半あまりで、朝ドラや映画への出演を果たした黒崎さん。「とんとん拍子でどんどん進んでいくのが怖かったりもします」と謙虚に話す一方、これからの役者人生を冷静に見つめる。

 「きれいな顔でもスタイルがめっちゃ良いわけでもない。自分にしかできないオリジナルをつくり、(俳優の世界の)隙間を見つけていきたい」

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