佐世保・宮島市長 就任から半年 まだ見えぬ「子育て政策」 市民との近さ、評価も

就任半年を迎えた宮島市長。「99の政策の多くを実現できるように頑張っていきたい」と話す=佐世保市役所

 長崎県佐世保市の宮島大典市長は30日で就任半年を迎えた。市民と気さくに交流しながら公務にあたる姿に「顔が見える市長」との評価がある。一方、選挙で掲げた99項目の公約は「1丁目1番地」と定めた子育て政策について動きが見えず「立案、実行のスピードが遅い」との意見も出始めている。宮島市政の半年を振り返った。

 「9月議会では一部公約に関わる部分を取り上げながら予算を作り、議会にも認めてもらった」。市長は26日の定例会見で、半年間をこう自己評価した。

 市長はこの半年、「99の政策」に沿って市政運営をしてきた。例を挙げると、学びの多様化学校(不登校特例校)の設置に向けて研究する事業費を予算化。国際クルーズの誘致では部署を新設し、受け入れ態勢を強化した。庁内からは「トップダウンではなく、じっくり話を聞き、決めるタイプ」との声もある。

 こうした市政運営を議会側はどう見ているのか。ある市議は「物足りなさを感じる」と指摘する。市長が選挙で第2子以降の保育料と中学校給食費の無償化といった子育て支援を「1丁目1番地」に掲げながらも、まだ動きが見えない点を挙げ「どんな“球”を投げてくるのか楽しみにしていただけに残念」と話す。一方、別の市議は「まだ助走期間。前市長から引き継いだ課題が多く、すぐに“カラー”は出しにくい」とおもんぱかる。

 市長は就任後、数多くのイベントに足を運び、市民と記念撮影に応じたり談笑したりする様子を交流サイト(SNS)に投稿している。市民との近さを好意的に捉える声もあるが、市議の1人は「政策を出さないと、そのうち市民から厳しい目が向けられるだろう」と話す。

 政治家としては“カラー”を出し始めたようにも映る。4月の市長選は、自民県連の推薦を受けた相手候補に対し、特定の党の支援を受けず「オール佐世保」で戦った。選挙戦を支えた労組との政策協定には「他の選挙では中立」という趣旨の内容も含まれる。

 ところが、与野党一騎打ちだった衆院長崎4区補選では自民候補を支援。「佐世保は国策と直結している」と政府与党とのつながりを重視したと説明するが「本音では自民に戻りたいのでは」(市議の1人)とみる声も。長く支援を受けてきた労組と動きを異にした結果に、ある市議はこう指摘する。

 「今の市長は風見鶏。いずれ自身の選挙にブーメランとなって返ってくる可能性もある」

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