鳥インフルで全殺処分回避へ 139万羽被害の東北ファーム(青森県)、鶏舎分割管理を国内初導入

東北ファームの分割管理のイメージ図。仮に1区画で感染が起きても、全殺処分を回避できる(東北ファーム提供)
鶏舎を区分けするため、新たに設けられた柵(東北ファーム提供)
記者会見する東北ファームの山本社長=30日午後、三沢市三沢庭構

 昨年12月に高病原性鳥インフルエンザが発生し、国内最多の約139万羽を殺処分した採卵養鶏業者「東北ファーム」(青森県三沢市、山本彌一=やいち=社長)が30日、農場を複数の区画に分けて衛生管理に当たる「分割管理」を11月1日から行うと明らかにした。仮に一部の区画で感染が判明しても、殺処分数を最小限に抑えることができる。農林水産省によると、国内業者による導入は全国初。

 今月に入り、北海道で2羽の野鳥の死骸から鳥インフルのウイルスが検出されている。流行が懸念される時季を前にシステムの導入が整った。この日、同社で記者会見した山本社長は「目的は(全殺処分という)リスクを減らすこと。安定した経営を目指していく」と話した。

 鳥インフルのウイルスは感染性が極めて強く、家畜伝染病予防法では農場の一部で感染が出た場合、全て殺処分しなければならない。分割管理では数カ所に分けた区画それぞれを一つの農場とみなし、人や車の行き来を完全になくしてウイルスの広がりを防ぐ。仮に発生が確認されたとしても、殺処分は発生のあった区画にとどめられる。

 今回、同社は47の鶏舎を柵で3区画に分けた。卵の選別や包装のための施設を共用せず、更衣室や消毒場を区画ごとに置くほか、飼料業者に対しては区画ごとに車両を変えてもらうことにしている。

 設備にかかった費用は3億円超で、資材の高騰もあって当初の予定より4割増となった。山本社長は、昨季の鶏卵の供給不足により価格の上昇を招いた反省を踏まえ「消費者や取引関係者に、再び迷惑をかけるわけにいかない。コスト増はやむを得ない」と述べた。

 現在、農場で飼育しているのは65万羽で鳥インフル発生前の半分程度。2年半後には、150万羽体制にする方針を打ち出している。国内で先駆けとなる注目の取り組みに、山本社長は「全国のモデルケースにもなる。他の業者にもノウハウを提供していく」と語った。

 分割管理を巡り、農水省は6月に指針を策定。全国の業者に導入を促している。

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東北ファーム 三沢市の採卵養鶏業者。1966年に採卵鶏1万羽で創業。2012年に100万羽、18年には150万羽と生産体制を拡大してきた。21年にノースランド(階上町)、22年に三誠ファーム(五戸町)を子会社化。鳥インフルエンザ発生前は首都圏などに1日100万個以上の卵を供給、東北最大級の業者として知られた。

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