「業者の行為、罪問われない」青森県職員、独断で地裁に陳述書 青森県今別町・サーモン血投棄

報道陣の取材に応じる山中局長=30日午後、県庁

 昨年6月、青森県今別町の今別漁港で養殖したサーモンの大量の血が海に不法投棄され、養殖業者が廃棄物処理法違反容疑に問われた事件に関し、県の職員が事件後、業者の行為は罪に問われない-との趣旨の陳述書を上司に無断で作成し、青森地裁に提出していたことが30日、県水産局への取材や東奥日報の情報公開請求で分かった。県が今年6月、「独断での文書提出」を理由に、この職員を懲戒処分としたことも判明した。

 事件を巡っては県警が昨年10月、この県職員の行動に疑問があるとして、生活安全部長名で県水産局長に対し、適切な対応を求める要望書を提出していた。

 要望書と東奥日報の取材を総合すると、職員の陳述書は「海に魚の血を流す行為は他業者もやっている。その都度摘発されては、事業が成り立たない」との内容。県水産局の山中崇裕局長は30日、東奥日報などの取材に、職員が裁判所に陳述書を提出したことは認めたが、内容や経緯など詳細は「ノーコメント」とした。業者の投棄行為には問題があるとの認識も示した。

 一方、県は同日、本年度上半期(4~9月)の職員懲戒処分を公表。6月8日付で、昨年7月時点で東青地域の出先機関に勤務していた50代男性主幹を減給1カ月(10分の1)としたと明らかにした。

 県人事課によると、処分理由は昨年7月下旬、上司に無断で、担当業務に関する個人の認識を県の認識として文書を作成し、国の機関に提出して「公務の運営に支障を生じさせた」(同課)ため。山中局長と三浦猛史人事課長は、陳述書を提出した職員は男性主幹か-との質問にいずれも「コメントできない」としたが、否定はしなかった。

 県警はこの事件で昨年7月、養殖業者の社長を逮捕。関係者の話を総合すると、県職員はその直後、青森地裁に陳述書を提出した。同地裁は逮捕の2日後、青森地検の勾留請求を却下し、社長は釈放された。地検は同10月、社長を不起訴処分とした。

 青森地裁総務課の担当者は、陳述書が勾留請求却下に影響したかどうかについて、30日の取材に「裁判官個人の判断になるので答えられない」とした。

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