「酒田の誇り」沸く古里 大相撲・北の若関新入幕

北の若関の新入幕を祝い、懸垂幕が掲げられた=酒田市役所

 「酒田の誇りだ」。本県出身力士としては10年ぶりとなる快挙に、港町は沸いた。大相撲で、酒田市出身の北の若関(22)=本名斎藤大輔、八角部屋=の幕内昇進が30日、決まった。強豪・埼玉栄高に進むまで、四股を踏み、腕を磨いた稽古場「酒田相撲教室」の後輩たちは誇らしげ。市役所では正面玄関に祝福の垂れ幕が設置され、地元の人たちは、さらなる躍進に期待を寄せた。

 酒田相撲教室に通う酒田六中3年仲條峻太郎さん(15)は北の若関を「特別な存在」と語った。関取が中学3年時、1年間だけ、一緒に稽古を積んだ。まわしを付けるのを手伝ったこともある。十両昇進後は取組の配信映像などを見てまわしの引き付け方を学んだ。「幕内でも大輔君らしい力強い相撲を取ってほしい」とエールを送った。

 「いつか大きなことをしてくれると思っていた」と喜ぶのは、酒田光陵高2年村上大祐さん(17)。小学3年時に北の若関を見て「1人だけオーラが違う」と感じたという。埼玉栄高進学後、関取が帰省した際、1度だけ胸を借りた。「前に出ることを意識して」。その指導は、今も心に刻んでいる。

 母百合さんには、以前から、幕内昇進を期待する声が周囲から寄せられていた。今年は八角部屋の創設30年の節目。日本相撲協会理事長で師匠の八角親方も還暦を迎える記念の年だ。「入門して、体づくりを一からやってきた。このタイミングで昇進できたのはご縁を感じる」と語った。

 いつもは「血圧が上がってしまうから」と生中継は見ないようにしているが、九州場所の初日、11月12日は北の若関の誕生日。「新しい化粧まわしを付けて土俵入りする姿を見守りたい。一番一番大事に取ってほしい」。静かに喜びに浸る母はその日を待ち望んでいる。

懸垂幕掲げ祝福・酒田市役所

 酒田市役所では、1階ロビーと正面玄関前の柱に懸垂幕計5枚が掲げられた。同市出身の幕内力士誕生は、1983(昭和58)年の若瀬川関(故人)以来で、40年ぶりの吉報だ。

 祝 北の若関 幕内昇進―。市職員らが縦4メートル、横0.8メートルの幕をロビーに、縦2メートル、横0.6メートルの4枚を玄関前に備え付けた。市民を含めた後援組織「北の若を応援する会」の会長を務める矢口明子市長は「大変うれしい。途中けがもあり心配したが、努力のたまものだと思う」とのコメントを発表した。地元企業などで構成する「北の若を支援する会」(新田嘉一会長)は、さらなる活躍に向け今年9月、北の若関に着物一式を贈呈している。

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