ついにプラットフォームBoPが発動。WEC最終戦を前にポルシェとキャデラックのLMDhに微調整

 WEC世界耐久選手権の最高峰カテゴリーであるハイパーカークラスで、LMDh規定のマシンを走らせるポルシェとキャデラックは、今週末にバーレーン・インターナショナル・サーキットで開催される2023年シーズン最終戦を前に、“プラットフォームBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)”の一環として車両重量の軽減を受けた。

 11月4日(土)に8時間の決勝レースが行われるシーズン・フィナーレを前に、10月26日付でFIA国際自動車連盟から発表されたブルテンによると、共通ハイブリッドシステムを搭載するポルシェ963とキャデラックVシリーズ.Rは、それぞれ7kgの軽量化が認められている。その一方で、最大スティントエネルギーも2台そろって1MJ削減となった。

 調整後のキャデラックVシリーズ.Rの最低重量は1030kgとなり、ル・マン・ハイパーカー(LMH)規定車であるヴァンウォール・バンダーベル680と、モンツァ以降欠場が続くグリッケンハウス007と並んでクラス最軽量のマシンに。ポルシェ963は1046kgで最終戦に臨む。

 前述のとおり、両車ともに最大スティントエネルギーは削減されたが、最高出力と後輪を駆動させるハイブリッドの展開速度に変更はない。また、ポルシェとキャデラックの両LMDhマシン以外のLMH車両についても、各種パラメーターに変更なく以前発表されたBoPテーブルのままシーズン・フィナーレを迎える予定だ。

 バーレーン8時間に向けたアップデートは、WECの主催者であるFIAとACOフランス西部自動車クラブが、今シーズン初めて“プラットフォームBoP”の変更を実施したことを意味する。

 このシステムでは、必要と判断された場合に応じてプラットフォーム全体のBoP値を調整するオプションが用意されていた。

 今年7月にFIAとACOがシーズン終盤3ラウンド(モンツァ、富士、バーレーン)のBoPテーブルを発表した後、プラットフォームBoPを変更するには充分な代表データを持つふたつのレースが必要とされたが、モンツァと富士でのドライコンディション・レースによってこの条件が満たされていた。

 6月のル・マン24時間レースの前に行われたBoP調整は、LMDhプラットフォームとLMHプラットフォームとの間ではなく車両ごとに調整が入ったものであり、今回の調整とは性質が異なるものだ。

キャデラックVシリーズ.Rの車両重量は1037kgから1030kgとなり、ヴァンウォールのLMH車両と並んでハイパーカークラス最軽量の1台に
今回のBoP変更はプラットフォームごとの調整で、その対象がLMDhであたっため、トヨタやフェラーリ、プジョーなどのLMH規定車のパラメーターは変わっていない

■2023年WEC世界耐久選手権第7戦バーレーン8時間レース ハイパーカーBoP(10月26日付)

プラットフォーム マシン 最低重量 最高出力 最大エネルギー量 前輪MGU作動速度
(ドライ/ウエット)

LMDh キャデラックVシリーズ.R 1030kg(-7) 504kW 894MJ(-1) ―

LMH フェラーリ499P 1075kg 505kW 901MJ 190kph/190kph

LMH グリッケンハウス007 1030kg 520kW 909MJ ―

LMH プジョー9X8 1041kg 520kW 908MJ 135kph/150kph

LMDh ポルシェ963 1046kg(-7) 514kW 908MJ(-1) ―

LMH トヨタGR010ハイブリッド 1080kg 514kW 912MJ 190kph/190kph

LMH ヴァンウォール・
バンダーベル680 1030kg 520kW 906MJ ―

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