“次世代の船”に潜入!日本一の海事都市・今治が世界に誇るスゴさとは!?

日本一の海事都市、愛媛県今治市で今年、環境にも働く人にも優しい“次世代の船”が造られました。開発したのは「未来につながる船を造りたい」と集まった有志たち。その思いに迫りました。

今治市吉海町にある山中造船で、今年5月、次世代型の貨物船が完成しました。それが「SIM―SHIP(シムシップ)」です。

この船を開発したのが、全国の海運や造船の会社など約50社が2020年に設立した「内航ミライ研究会」です。

内航ミライ研究会・曽我部公太専務理事
「地球温暖化であったり環境の変動であったりというのが世の中に現れてくるにあたって、船の世界も何かできることがあるんじゃないかと。一歩でも課題に対して解決できる船を造りたいということで、企画をしました」

約2年の歳月をかけて開発されたSIM―SHIPは、国内各地に貨物を運ぶ内航船で、地球にも船員にも優しいんです。

さっそく、船内へ潜入取材です。

まず案内してもらったのは、貨物を収容する貨物艙(かもつそう)の上に被さる「ハッチカバー」と呼ばれるもの。カバー自体は、巻き取られることによって開いたり閉じたりする、巻き取り型です。

ハッチカバーは、これまでは油圧で動かしていたそうですが、内航船の巻き取り型ハッチカバーとしては初めて電動化。電動化によって機器の選定を最適化することができ、使うモーターもコンパクトになり省エネが実現しました。

次は、船首へ。ここには「ウインチ」と呼ばれる機械があります。ウインチは、チェーンとロープを巻いたり伸ばしたりするもの。チェーンはアンカーにつながっていて、ロープは岸壁につないで船を寄せるために使われます。今回、このウインチも電動化しました。こちらもこれまで動力が油圧だったため騒音がひどく、船員にとって大きな負担になっていたといいます。

内航ミライ研究会・曽我部公太専務理事
「離着桟は最も神経を使って船員さんにとっても大変な作業と聞いていますので、こういった機器によって低減ができていったらいいなと思っています」

そして、船尾へ。ボートデッキと呼ばれる場所には、電力を供給するコンテナ型のバッテリーを搭載しました。燃料で動かす発電機を使わないことで、CO2の削減にもつながっています。

そして、バッテリーを充電をするのが、今治市のゴミ焼却施設「バリクリーン」です。バリクリーンには、ゴミを燃やした熱を活用した発電設備があり、これでバッテリーを充電したところ、一般家庭12日分の電力がまかなえたといいます。

山室勝機関長
「船というのはトラックなどに比べてCO2削減少ない運送手段。だからさらに地球温暖化防止に貢献できると思います」

今治市環境施設課・浅海文明さん
「市のクリーンセンターで作ったバイオマス発電の電気を提供できること、環境にやさしい取り組みの観点から見ると非常にうれしく思っています」

バッテリーシステムの搭載などで、SIM―SHIPは従来の船より12%以上CO2の排出を減らすことを目標にしています。

研究会の中心メンバーとして開発に携わった曽我部さんは「今後は風力や太陽光なども船に持ち込めないか」と、さらなるエコを見据えます。

内航ミライ研究会・曽我部公太専務理事
「身近な船がさらに環境にやさしいものであれば、一般の方々も船は物流に役立っているよね、と。1つ1つの積み重ねで今後の地球環境が良くなればという気持ちでこれからも活動していきたいと思っています」

国内物流の4割国際物流の99%を占めるという海上輸送。日本一の海事都市から発信するミライの姿が環境と私たちの生活を支えていきます。

© 株式会社あいテレビ