伝統の昆布巻93年の歴史に幕 七尾一本杉・しら井が30日閉店

臨床美術の教室生による多彩な作品に見入る関係者=七尾市一本杉町

  ●ギャラリー展も最後に

 七尾市一本杉町の老舗海産物店「しら井」が今月30日、93年の歴史に幕を閉じる。伝統の「昆布巻」などで長年にわたり多くの人に親しまれてきたが、従業員の高齢化などを理由に閉店を決断。地元作家の発表の場である店内のギャラリーも閉鎖となる。常連客は「最後の味」を求めて続々と訪れており、従業員にねぎらいの言葉を掛け、別れを惜しんでいる。

 看板商品の昆布巻は、肉厚の日高昆布を長時間じっくり煮込み、ニシンやブリを巻く。ほろほろと口の中でほぐれる独特の食感で多くのファンを獲得した。ただ、同店によると、近年は温暖化の影響による昆布の収量が減り、このことも閉店の原因につながったという。

 常連の50代女性は「柔らかくて口の中でほどよく味が広がる。他の店とは全然違う」と閉店を惜しんだ。

 1992(平成4)年7月には、住民の交流につなげようと店内の一角に「ミニギャラリー玉藻」を開設。出展無料で、店外のショーウインドーにも作品を展示できる。そのため、口コミで評判を呼び、絵画や陶芸、手作り雑貨など幅広いジャンルの作家が毎月、作品を寄せた。これまでに400回近くの企画展を開いた。

 1日からは最後の作品展が始まる。「誰でもピカソ展」(北國新聞社後援)と銘打ち、七尾市の荒牧裕子さんと谷内静さん、小矢部市の前田昌子さんの臨床美術士3人が企画した。3人は、作品づくりを通して脳の活性化を図る「臨床美術」の教室を開いており、生徒による個性豊かな作品約120点を27日まで展示する。

 3人は昨年も出展しており、荒牧さんは「これだけ地域に愛されていたギャラリーは他にない。多くの作家が感謝していると思う」と閉鎖を惜しんだ。

 しら井のおかみ、白井洋子さんは「多くの人のおかげでここまで長く店を続けられた。地域の活性化に少しでも貢献できて良かった」と振り返った。

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