TGR WRCチャレンジプログラム、2期生はラリー2へステップアップ。2名が欧州でトレーニングを継続

 TOYOTA GAZOO Racing(TGR)は10月31日、これまでラリー4車両でのトレーニングを行なってきたTGR WRCチャレンジプログラム2期生の“第2フェーズ”として来季2024年から、ラリー2車両を使用するクラスへのステップアップを発表した。

 前年からフィンランドを拠点にトレーニングを開始した小暮ひかる、山本雄紀、大竹直生の3名は着実に実力をつけており、その中から小暮、山本の2名が欧州での武者修行を継続することとなった。

 2015年にスタートしたTGR WRCチャレンジプログラム(旧TGRラリーチャレンジプログラム)は、勝田貴元と新井大輝が1期生として参加。“ラリー一家”の生まれながらサーキットレースに進んだため、勝田はほぼラリー経験がなかった状態から努力を積み重ね、その後の選考を勝ち抜き2019年にラリー・ドイチェランドでWRCトップカテゴリーにデビュー。2023年シーズンにはワークスドライバーに昇格し、TGR-WRTからトヨタGRヤリス・ラリー1を駆ってWRCにフル参戦するまでに成長を遂げている。

 そんな勝田の後輩として2022年の初めに2期生のメンバーとして選ばれた小暮と山本、そして大竹の3名は、先輩・勝田に続くことを目標にフィンランドを拠点に活動を続けてきた。ラリーの本場に飛んだ3名は基本的なトレーニングに加え、2輪駆動のラリー4車両でフィンランド国内や欧州の国際ラリーに参戦。それぞれがパフォーマンスを発揮し、その成長ぶりを示している。

 今回発表されたプログラムの第2フェーズでは、4輪駆動のラリー2車両を使用した内容にステップアップすることとなった。来年、小暮と山本は複数のWRCイベントも含め、欧州のラリー参戦を通してさらなる成長を目指すことになる。一方の大竹は日本に戻るが、引き続きTGRとともに全日本ラリー選手権を舞台に、日本の若手ドライバーを牽引する存在としてドライバー活動を継続していく。

 元WRCドライバーでTGR WRCチャレンジプログラムのチーフインストラクターを務めるミッコ・ヒルボネンは、次のように2期生の成長を認めた。

「この2年を通じて小暮、山本、大竹の3選手全員が大きな成長を遂げた。日本から遠く離れた国で家族とも離れて暮らすことになり、ラリーの面だけでなく、彼らの人生においても素晴らしい経験になったと思う」

「残念ながら、欧州でのチャンスを全員に提供し続けることはできず、難しい選択をしなくてはならなかった。山本はマシンに問題があった時を除けばつねに優れたパフォーマンスを見せてくれた。小暮はラリーの経験が非常に少ない状態でフィンランドに来たが、本当によく努力をし、ふたりに追いついた。彼の成長に感心しているよ」

「大竹も良い結果を出し、努力を怠らなかった。TGRが大竹のサポートを継続し、彼が全日本ラリー選手権に出場するチャンスがあることを嬉しく思う。我々講師陣は、彼が良い結果を出してくれると信じているし、我々も引き続き連絡を取り合い、遠くからできる限りサポートしたいと思っている」

「ラリー2にステップアップすることになる小暮と山本にとっては、競争が激しくなり、スピード域も速くなるため、プログラムはさらに難しいものとなるだろう。彼らが今後どのような成長を見せてくれるか楽しみだね」

これまでWRCチャレンジプログラムの2期生がドライブしてきたルノー・クリオ・ラリー4。画像は小暮ひかる/トピ・ルフティネン組(2023年ラリー・ポーランド)

■「つねにベストを尽くしてきた」WRCチャレンジプログラム2期生コメント

●小暮ひかる

「プログラムを継続できることになり本当に嬉しく思っています。つねに自分のベストを尽くしてきたので、どんな結果になっても悔いはありませんでした」

「グラベル(未舗装路)や雪上での走行経験がなかったので最初のころはかなり苦労しましたし、ペースノートのシステムも完全に変える必要がありました。コドライバーのトピ(・ルフティネン)とたくさんレッキトレーニングをしてきて、ここ最近のラリー(ポーランド、ラトビア、フィンランド)では成長を感じていました」

「ラリー2はまた新しいステップとなりますが、とても楽しみにしています。TGRと講師陣のおかげで多くの経験と成長をすることができ、本当に感謝しています。今後さらに良い結果を出していけるよう努力を続けます」

●山本雄紀

「このような素晴らしいプログラムを継続させていただくことになり、とても光栄です。約2年の間にラリー4車両でたくさんのことを学ばせていただき、最近のラリーではスピードもついてきていました。しっかり成長することができ、ラリー2にステップアップする準備ができたと思っています」

「良いドライバーがたくさんいる競争の激しいカテゴリーなので、自分のスピードとスキルを試すのが楽しみです。すぐにトップスピードを出すのは簡単ではないと思いますが、しっかり学びを重ね、将来的にトップ争いができるようになると信じています」

「自分たちだけでは成し遂げられないことばかりで、ラリーだけに集中できる本当に貴重な機会をいただき、TGR、そして支えてくれている全ての皆さんに感謝しています」

●大竹直生

「プログラムに参加してから2年間、たくさんの変化がありました。チャレンジングで簡単ではありませんでしたが、将来に生かせる素晴らしい経験となりました。ラリーだけでなく、人としても多くを学ばせていただきました」

「来年、欧州でプログラムを続けることができないのはとても残念で仕方ありませんが、まだラリー競技を続けるチャンスがあることは嬉しく思っています。TGRをはじめ、サポートいただいたすべての皆さんに感謝の気持ちを伝えたいです」

「ラリーのキャリアをあきらめていません。日本でも引き続きプッシュし、スピードだけでなく、このプログラムで学んだすべのことを示したいと思っています」

 WRCチャレンジプログラムの2期生に続く3期生は現在選考が行われており、9月に富士スピードウェイで1次、2次選考が行われた。最終選考は12月にフィンランドで行われる予定だ。

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