トヨタから5年連続でWRCチャンピオンが誕生。ラトバラ「連覇達成のカッレとヨンネを心から誇りに思う」

 2023年WRC世界ラリー選手権第12戦『セントラル・ヨーロピアン・ラリー(CER)』のデイ4が、10月29日(日)にドイツのパッサウを起点に行われた。ラリー最終日に臨んだTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)はカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)が総合2位でフィニッシュ。表彰台を獲得するとともに、最終戦を待たずして、2年連続2回目となるドライバーズおよびコドライバーズタイトルを獲得した。

 チームメイトのセバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合4位。また、TGR WRCチャレンジプログラムにより4台目のトヨタGRヤリス・ラリー1での出場となった勝田貴元/アーロン・ジョンストン組も総合5位入賞を果たした。前日にデイリタイアを喫したエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組は、最終日に再出走し総合31位完走となっている。

■史上6人目の連覇達成ドライバーに

 ラリーの拠点となったドイツ、その隣国のオーストリア、同じく隣接するチェコの欧州三カ国を巡る『セントラル・ヨーロピアン・ラリー』の最終日は、パッサウのサービスパークを起点にオーストリアで1本、ドイツで1本のステージを、ミッドデイサービスを挟むことなく各2回走行するかたちで実施された。

 この最終日は青空が広がる爽やかな朝を迎え、路面は完全にドライアップ。今大会初めてウエットタイヤを使用しない一日となった。総合2番手でデイ4に入ったロバンペラは、タイトル争いの唯一のライバルであるエバンスが前日のSS11でコースオフを喫しデイリタイアとなったことで、数ポイントを獲得するだけでタイトルを確定できる状況に。

 そのため、選手権リーダーである彼は最終日も確実性の高い走りに徹し、4本のステージをすべて7、8番手タイムで走行。首位を譲ったティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)とのタイム差が最終的に57.6秒まで拡がったが、総合2位でラリーを走りきり、史上最年少でチャンピオンとなった2022年に続いて2年連続でドライバーズタイトルを獲得した。これによりロバンペラは、WRC史上6人目として連覇達成ドライバーのリストに名を連ねることとなった。

 ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ2023年シーズン、ロバンペラ/ハルットゥネン組は非常に安定したシーズンを送ってきた。彼らは母国ラリーとなったフィンランドを除く11戦でトップ4フィニッシュを達成し、ポディウム獲得回数は7回に上る。そのうち3回は表彰台の頂点に立った。

2023年WRC第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリーの暫定表彰式
最終パワーステージで意地を見せ、トップタイムを刻みボーナスの5ポイントを獲得したエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリー

■カンクネンに似ている

 すでに3年連続のマニュファクチャラーズタイトル獲得を決めているTGR-WRT。このチャンピオンチームのメカニックとエンジニアたちによって修理されたクルマで最終日に再出走したエバンスは、最終戦ラリージャパンにタイトル獲得の望みを繋ぐべく、最終のパワーステージに集中。渾身の走りでベストタイムを記録し、ボーナスの5ポイントを獲得してみせた。

 しかし、ロバンペラが総合2位となり18ポイントを加算したことによってタイトル獲得の可能性は消滅。とはいえ彼の戦いはまだ終わりではない。自身3度目となる選手権2位を得るべく、最終戦のラリージャパンでもプッシュを続けていかなければならない。ランキング3位につけるヌービルとのギャップは7ポイントだ。

 デイ2のSS3でホイールにダメージを受けたあと一時は総合10番手まで順位を下げ、そこから総合4番手まで挽回してきたオジエは、最終日も攻めの走りを継続。2本のベストタイムと、1本のセカンドベストタイムで、総合3番手につけるオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)にプレッシャーをかけていくが、表彰台にはあと一歩及ばず。

 また、勝田はSS16で3番手タイム、SS17では今大会ベストとなる2番手タイムを記録するなど前日の午後のループに引き続き好ペースを維持し、総合5位でフィニッシュした。母国イベントである次戦ラリージャパンに向け、いい流れを掴んでWRC初開催の難関ラリーを締めくくっている。

 TGR-WRTのボスであるヤリ-マティ・ラトバラは、2021年に当時自身が持っていたWRC史上最年少優勝記録を塗り替えた若きチャンピオンの連覇を喜ぶひとりだ。

「カッレ(・ロバンペラ)とヨンネ(・ハルットゥネン)を心から誇りに思うし、彼らは二度目のタイトル獲得に本当に相応しいと思う」とフィンランド人のペアを称えたラトバラ。

「シーズン中、カッレは驚くほど安定していた。今回のタイトルは、昨年以上に勝ち取ることが難しかったと思うし、エルフィン(・エバンス)は良い仕事をしてプレッシャーをかけ続けたが、最終的にカッレは自分の仕事をやり遂げた。彼のアプローチはユハ・カンクネンと似ていて、すべてのラリーで優勝を狙うのではなく、必要なポイントを計算し考えて戦っている」

「エルフィンもまた、非常にいいシーズンを送ってきた。彼はこのラリーでカッレを上回り、チャンスを維持する必要があった。残念ながらうまくいかなかったが、あの状況でできることはすべてやったと思う」

「これで3つのタイトルをすべて獲得することができたので、ラリージャパンでは選手権のプレッシャーを感じることなく、ドライバーたちには勝利を目指してプッシュしてもらいたいと思っている」

総合5位となった勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリー
総合4位でフィニッシュしたセバスチャン・オジエ(右)とヴァンサン・ランデ(トヨタGRヤリス・ラリー1) 2023年WRC第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリー
初戴冠となった2022年シーズンに続き、ドライバー/コドライバー選手権タイトルを獲得したカッレ・ロバンペラ(右)とヨンネ・ハルットゥネン 2023年WRC第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリー

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