メルセデスF1チーフテクニカルオフィサーのエリオットが離脱。最強時代に貢献後、ゼロポッド失敗への対処にあたる

 メルセデスF1チームは、チーフテクニカルオフィサーのマイク・エリオットがチームから去ることを発表した。エリオットは、約11年にわたりメルセデスに所属し、その間、チームはコンストラクターズ選手権8連覇、ドライバーズ選手権7連覇を成し遂げた。しかし2022年に新世代F1マシンが導入されてからは、メルセデスは1勝しか挙げていない。

 2000年にマクラーレンのエアロダイナミシストとしてF1キャリアをスタートしたエリオットは、2012年にメルセデスに加入し、ヘッド・オブ・エアロダイナミクス、テクニカルディレクターを経て、チーフテクニカルオフィサーのポジションに就いた。メルセデスはコンストラクターズタイトルを2014年から2021年まで、ドライバーズタイトルを2014年から2020年まで獲得し、圧倒的強さを示した。

2020年F1第14戦トルコGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)

 大規模なテクニカルレギュレーション変更が行われた2022年、メルセデスは“ゼロポッド”デザインを採用したが、これが失敗に終わり、W13は1勝しか挙げることができなかった。2023年にもゼロポッド・コンセプトを維持した結果、W14はやはり優勝を狙えるパフォーマンスを示すことができず、メルセデスはこのコンセプトを断念することを決めた。

2022年F1第16戦イタリアGP ルイス・ハミルトン(メルセデス)
2023年F1第1戦バーレーンGP ルイス・ハミルトン(メルセデスW14)

 エリオットのポジションは4月にテクニカルディレクターからチーフテクニカルオフィサーに変更され、チーフテクニカルオフィサーを務めていたジェームズ・アリソンが代わってテクニカルディレクターの座に就いた。この交代は、エリオットの意向で行われたと、当時説明された。

 それから約半年後の10月31日、シーズン終了を待たず、エリオットがチームを離れることが発表された。チームは、エリオットの離脱について、次のように説明している。

「今年、マイクはブラックリーのチーフテクニカルオフィサーの役割に移り、今後に向けてチームの技術的能力を更新するための技術戦略の策定に注力してきた」

「この計画が整い、実行の過程にある今、マイクは今後数カ月間、このスポーツから離れ、その後、次のチャレンジを決定するという決断を下した」

 チーム代表トト・ウォルフは、長年チームに貢献してきたエリオットに感謝の言葉を贈った。

「マイクは過去10年間、チームの成功の礎である存在のひとりだった。今日彼に別れを告げることになり、本当に複雑な心境だ。マイクは非常に知的なテクニカルブレインであり、優れたチームプレイヤーだ。彼は勝利する力があるレーシングカーに関してだけでなく、我々チームの文化の構築にも大きく貢献した」

「だが、一方で、彼がメルセデスの外で新たな冒険を始める準備ができていることは明らかであり、これは彼にとって正しい一歩であることも分かっている。今日チームを去る彼に対し、彼がこの11年にわたりチームにもたらしてくれた努力、献身、専門知識に感謝するとともに、今後の彼の成功を祈る」

2014年F1スペインGP ルイス・ハミルトン、ニコ・ロズベルグとともに表彰台に上ったマイク・エリオット(メルセデス)

 エリオットは「メルセデスチームの一員になれたことは、私のキャリアにおける大きな特権のひとつだった」と述べている。

「在籍中、この集団が、力を合わせてレースに勝ち、最初のチャンピオンシップを獲得し、8年連続コンストラクターズタイトル獲得の記録を打ち立てるまでに成長する過程を見てきた。その旅に貢献できたことを誇りに思う」

「この2シーズンは、我々が望んでいた形で勝利を重ねることはできなかった。それによって我々は、他のたくさんの面で試され、パフォーマンスをどのように発揮するかについての基本的な前提について考え直さざるを得なかった。過去6カ月、私はチームの次の成功サイクルの基礎を提供することになると期待される技術戦略の開発を行うことを楽しんできた」

「メルセデスを出て、次の一歩を踏み出すのに、今が適切な時期であると、私は判断した。23年間、このスポーツに全力で取り組んできたので、まずは立ち止まって状況を見つめ、それから次の挑戦を見つける。素晴らしい12年間を共に過ごしたチームメイトに感謝し、彼らの今後の成功を祈る」

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