地元愛あふれる人気商品作り85年「御菓子処むらかみ」歴史に幕 青森・弘前市

85年の歴史に幕を閉じた「御菓子処むらかみ」。お菓子を前にする、社長の村上精司さん=31日午後、弘前市石川

 青森県弘前市石川で昭和初期に創業した「御菓子処むらかみ」が31日、包装資材や菓子原料の高騰などを理由に、85年の歴史に幕を閉じた。近所の大仏公園にあやかって作った「大仏餅」、豆乳入りのカステラであんこを挟んだ「津軽とうふ」といった地元愛あふれるお菓子で知られている。社長の村上精司さん(85)は「地域の方々に支えられた。仕事をしていて苦しいことはなかった」と話した。

 むらかみは1938(昭和13)年、当時の石川町内で父・竹蔵さん(故人)が創業。旧町内で2度移転し、県道石川百田線沿いの御幸橋近くに現在の店を構えた。精司さんは中学生の頃から店を手伝い、高校卒業後は京都府や神戸市で洋菓子作りの修業を積んだ。20代で店を継ぎ、洋菓子も売り始めた。

 和菓子が得意という息子の正晃さん(54)も家業を手伝い、大仏餅や津軽とうふのほか、洋酒を使ったケーキ「サバラン」や石川地区のリンゴで作ったアップルパイも人気だった。精司さんは「経営が厳しくなる前にやめることにした」と話す。

 営業最終日のこの日、多くの商品を半額に値引きして販売。閉店を惜しむ常連客らが訪れ、「元気でね」「お疲れさま」と精司さんや店員にねぎらいの声をかけていた。精司さんは「今日で最後と思うと何とも言えないが、何より皆さんに感謝している」と目を細めた。

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