「史上最年少」高島市長、メディア露出急増 市民目線と「空気読まない質問」心がけ 就任半年を振り返る

就任から半年を振り返る芦屋市の高島崚輔市長=芦屋市役所(撮影・吉田敦史)

 兵庫県芦屋市の高島崚輔市長が1日、就任から半年を迎えた。4月の市長選に名乗りを上げた無名の26歳は、瞬く間に有名になった。市への取材やテレビ出演の依頼は約60件に上り、今も届き続ける。現場との距離は縮まり、市長から直接届く問い合わせメールに目を丸くする職員も。「史上最年少市長」の6カ月を振り返る。(村上貴浩)

新聞掲載が1.6倍

 市広報国際交流課によると、4~9月の芦屋市関連の新聞記事は前年同期の283件から451件に増えた。「昨年は、小型ヨットで太平洋横断を達成した堀江謙一さん(芦屋市在住)のニュースなどがあり、例年より多かった。にもかかわらず今年はその1.6倍。明らかに増えた」と同課の桝井大輔課長。平日の公務に加えて土日は市内のイベントや学校行事を回り、東南アジア諸国連合(ASEAN)の会合にビデオ出演したことも。1日の休みもなく半年を駆け抜けた。

 この間の大きな目標は「発信だった」と高島市長。「幸いにも注目してもらっていたので交流サイト(SNS)も積極的に活用した」といい、自身のSNSアカウントでは災害やイベントの情報を発信。同課によると、フォロワーが約4千人だった写真投稿アプリ「インスタグラム」の市公式アカウントも、市長就任後に千人ほど増えたといい「芦屋をアピールできている」と実感する。

差出人、高島崚輔

 変化は役所内部の仕事にも及ぶ。ある日、課長級の男性職員の元に1通のメールが届いた。「差出人 高島崚輔」。市内施設のICT(情報通信技術)化に関する報告書を市長と副市長に提出した後だった。クリックすると「報告書にある機能ですが、なぜ採用しないのでしょうか。効果的だと思うのですが」などと記されていた。

 「民間だと社長が社員に直接送るようなもの。半年たった今でも、メールが届くたび驚いてしまう」と職員。他自治体でも、日常的な問い合わせメールが市長から職員に届くのは珍しいという。芦屋市の職員は「たくさん質問することで、現場レベルの1次情報をどんどん吸収していっているように感じる」。

 別の職員は「決裁の流れが変わった」と口にする。以前は課長や部長が副市長と施策や事業を協議し、最後に市長が決めていたが、事前の協議に市長が入る機会が増えた。

 市内施設の指定管理者について副市長に報告書を提出した際、同席していた市長から「ここはどうなってるんですか」「なぜこの進め方なんですか」といくつも指摘を受けた。「宿題」として持ち帰り、あらためて説明。4往復はしたという。職員は「市長は物事を俯瞰(ふかん)的に見ていて『なるほど、そういう視点があるのか』となる。行政の中にいると分からない気付きが多い」とした。

政治経験なし、空気読まない質問

 超難関の灘中高を卒業し、東大を経て米ハーバード大に進んだ。芦屋市役所でインターンを経験し、NPO法人も運営した。首長職が実質、初めての仕事となるが「知識や経験が少ないことは弱みでもある一方、強みでもある」と高島市長。職員に向けては「あえて空気を読まない質問」を心がけた。

 ある日の市議会の委員会。市内の福祉サービスに関して市議が「いつから始まるのか」と問いかけた。市の担当者は開始時期ではなく、建物の完成時期のみを答えたが、追加の質疑応答はなかった。

 委員会終了後、市長は担当者に「答弁になってないのでは」と尋ねた。すると担当者は「建物の完成後にさまざまな手続きがあり、開始時期が確実でないため、あえて明確な回答を避けた」と説明。質問した議員に聞いても、意をくんで了承していたという。

 「市役所内には『これはこういうもの』という当たり前や慣例で物事を進めてしまうことが多い」と高島市長。ゆえに、基本的であっても分からないことは納得できるまで質問し続け、市民に伝わらない役所や議会の暗黙のルールを意識的に減らすようにしている。「私が尋ねることは結局、市民への説明につながる。それが自分に一番期待されていたことだと思っている」と話した。

© 株式会社神戸新聞社