河川の氾濫被害対策へ 那須烏山市を流れる那珂川で「霞堤」の建設始まる 「住民の思い複雑…」

 4年前の東日本台風で那須烏山市を流れる那珂川の水があふれ、広い範囲で住宅が浸水した問題を受け、堤防の一部をあえて開けて、洪水の際に内陸に水を流し込む「霞堤(かすみてい)」の建設工事が始まりました。

 那須烏山市の下境地区では2019年10月の東日本台風で、集落を沿うように流れる那珂川の水があふれ、約70世帯の住宅が浸水しました。そのため、国は流域の県や市・町と連携し、総事業費約813億円をかけて「緊急治水対策プロジェクト」を進めています。その一環で、下境地区には、堤防の一部を開けて、洪水の際に増水した水を内陸に流し込んで氾濫を防ぐ「霞堤」が建設されることになりました。霞堤は、高さ6メートルほどの堤防を約2キロに渡って新たに作り、堤防がない下流の切れ目が水の流れる量を抑えるための開口部の役目を果たします。

 建設工事は先月(10月)から始まり、付近の田んぼの真ん中には、両脇を土のうで固められた工事用車両の道路が整備されました。そして1日も、大型の建設機械が周辺の竹を刈り取ったり、整地を行ったりしていました。

 下境地区の代表自治会長、両方恒雄さん71歳は、国が初めて、霞堤の建設計画を住民に説明してから3年余り、その経緯を見守ってきました。この周辺では、10年に1回程の頻度で洪水により住宅が水に浸かる被害があったことから長年、住民は水害のリスクに怯えながらの暮らしを余儀なくされてきました。

 霞堤は数年後に完成する計画ですが、水を貯める区域に入っている場所には当然住むことはできません。そのため、那須烏山市は住民にまとまって別の場所に移り住んでもらう「防災集団移転」の計画を進めています。ただ、事態が複雑なのは、防災集団移転は、対象の区域内のすべての住宅が移転する必要があることに加え、事業自体の実施が確定していないのです。移転より先に霞堤の建設が進み住民の思いは複雑です。

© 株式会社とちぎテレビ