スタジアム訴訟、上告正式に断念 栃木市「住民と対立長引くの本意でない」 住民「根本的な反省なく残念」

記者会見で上告断念を表明する大川市長(中央)=2日午前、栃木市役所

 栃木市岩舟総合運動公園内に日本理化工業所(東京都)が建設したサッカー専用スタジアムを巡る住民訴訟で、市が固定資産税や公園使用料を免除したのは違法とした東京高裁判決について、栃木市は2日、市役所で記者会見を開き、上告を断念すると発表した。大川秀子(おおかわひでこ)市長は「住民との対立が長引くことは本意ではない」と理由を説明した。固定資産税の免除決定取り消しを命じ、公園使用料の未請求を違法とした判決が確定する。

 スタジアムは同社子会社が運営する関東サッカーリーグ1部「栃木シティFC」のホーム施設。市は地域活性化や財政改善効果などから、税と使用料の減免について公益上の理由を主張していたが、高裁は判断の合理性を否定した。

 大川市長は会見で判決への不満をにじませつつ「チームへの支援策が認められず、市民に心配をかけて心からおわびする」と謝罪。「市政運営していく上で住民との合意形成が重要という警鐘」と判決を受け止めた。市は今後、同社に2022年度分と23年度分の固定資産税計約600万円と、20年度からの公園使用料計4739万円を請求する。

 増山昌章(ましやままさあき)副市長は当時の判断の誤りを認め「減免という手法を見直し、支援は続けていく」と述べた。控訴審の訴訟費用約550万円に関する市長らの弁償は否定した。

 原告団の早乙女(そうとめ)利次(としじ)代表(76)は「上告断念は当然。法律や裁量権を逸脱した根本的な反省がなかったのは残念だ」と話した。

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