【ベトナム】裾野産業育成へ地銀とタッグ[金融] ドンナイ省、池田泉州と協定

池田泉州銀行は、ドンナイ省政府と裾野産業育成に関する協力協定を締結した。前列左が鵜川頭取=2日、同省

池田泉州銀行(大阪市)は2日、ベトナム南部ドンナイ省コーディネーターグループと裾野産業育成に関する業務協力協定を締結した。同行とつながりのある幅広い分野の中小企業と同省企業の協業を後押ししながら、技術や品質、人材などの課題を総合的に解決していく。ベトナム政府は長年、裾野産業の育成を重要課題に挙げており、両者の協業を「モデルケース」として全国に広げていきたい考えだ。

池田泉州銀は2022年8月から、ドンナイ省工業団地管理局(DIZA)や省政府各局の代表者などで構成されるコーディネーターグループと、ベトナムの裾野産業育成に向けた協力を開始。今回の協定を通じてこれまでの取り組みを評価し、さらに課題解決を加速・発展させることを目指す。

調印式では、池田泉州銀の鵜川淳頭取兼最高経営責任者(CEO)が、「今回の取り組みは、ベトナムの裾野産業育成にとどまらず、日本企業がベトナム経済の中でビジネスを拡大していく上で重要な役割を果たす」とあいさつし、「裾野産業育成に関する課題解消に向けてあらゆるリソースを投入していく」と強調した。

■課題は双方の認識のずれ

ベトナムはチャイナプラスワンの有望投資先に位置付けられており、サプライチェーン(供給網)の多元化を図る目的で事業を検討する日本企業が多い。進出に向けた大きな課題になるのが裾野産業の未熟さだ。ベトナム企業の技術や品質・納期管理などは日本企業が求める水準に達していない場合が多く、パートナー企業探しに苦労するケースが多い。

一方で、地場企業も日本企業に対して「要求が高い」「単価が低く、発注量が少ない傾向がある」などの不満を抱えており、双方の間に大きなギャップが生じている。

池田泉州銀の渡邉宏朗ホーチミン駐在員事務所長は、「日越企業間の認識のずれが存在する限り、ビジネス実現は難しい」との思いから、ドンナイ省コーディネーターグループと協力し、裾野産業育成に向けた協力を進めてきた。

■地銀だからこそできること

取引先企業と地場企業の事業創出支援やパートナーシップ構築など、これまでの支援で積み上げた協業案件は20件余り。「モノづくりの街」大阪を地盤に、さまざま業種と国内外でつながる地銀の強みを生かし、両国企業の経営課題の橋渡し役になってきた。ベトナム有数の製造業集積地であるドンナイ省との親和性も高いという。

今回の協定を通じ、裾野産業を育てるための協業支援をより強化していく方針で、単なるマッチングにとどまらず、技術や品質、人材などの課題に対し、双方が持つ取引先・関係先と協力して解決に当たり、協業を促進する。将来的には同省で多数の新設が計画されている工業団地開発などでも省政府と連携したい考えだ。

■中央政府に全国展開を提言

EYベトナムも同日、ドンナイ省政府と協力協定を締結した

英大手会計事務所アーンスト&ヤング(EY)ベトナムも同日、日本企業の投資誘致などに関する協力協定を同省コーディネーターグループと締結した。同社は、ベトナムの投資環境改善や産業競争力の向上を目指す両国間の協力枠組み「日越共同イニシアチブ」で、裾野産業ワーキングチームのリーダーも務めている。池田泉州銀がドンナイ省と協力を進めてきた裾野産業育成に関する取り組みを「地方政府との協業におけるモデルケース」と高く評価している。両者の協業モデルを今後ベトナム全国に展開していくことを中央政府に提言する方針だ。

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