秋の濃厚ミステリー『ダ・ヴィンチ・コード』で謎解きとイタリア名所めぐり! トム・ハンクス×ロン・ハワード監督

『ダ・ヴィンチ・コード』© 2006 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

世界的ベストセラーの忠実な映画化

『ダ・ヴィンチ・コード』(2006年)は、言わずと知れたダン・ブラウンの世界的ベストセラーの映画化。主人公はハーバード大学で宗教象徴学を専門とするロバート・ラングドン教授。彼を主人公にしたシリーズでは「天使と悪魔」に次ぐ2作目だが、「ダ・ヴィンチ・コード」の方が先に注目され、先に映画化されたのは、やはりレオナルド・ダ・ヴィンチという謎多き芸術家と世紀の傑作<モナ・リザ>がフィーチャーされているのが大きいだろう。

映画は、パリで講演中のロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)のもとにパリ警察の刑事がやってくるところから始まる。教授の旧友で、これから会う約束をしていたルーヴル美術館のソニエール館長(ジャン=ピエール・マリエール)が殺されたというのだ。あわてて美術館に駆けつけると、館長の遺体はダ・ヴィンチの<ウィトルウィウス的人体図>の形で横たわっていた。

司法警察のファーシュ警部(ジャン・レノ)は、ラングドンを犯人と疑い逮捕しようとするが、危ういところを司法警察の暗号解読官でソニエールの孫娘でもあるソフィー(オドレイ・トトゥ)の機転で、美術館から脱出することに成功。二人は警察に追われながら、ソニエールがダ・ヴィンチの絵画に残した謎の鍵と暗号を解き、真犯人を突き止めようとするが……。

なぜトム・ハンクス主演に? 原作の主人公は“ハリソン・フォードに似ている”

主人公のラングドン教授は、原作ではハリソン・フォードに似ているとはっきり書かれており、ダン・ブラウンは『インディ・ジョーンズ』シリーズの冒険考古学者をイメージしたと思うのだが、映画化では監督のロン・ハワードと相性のいいトム・ハンクスがキャスティングされた。そのうえ、彼と行動を共にする暗号解読官のソフィー・ヌヴー役が『アメリ』のオドレイ・トトゥになった結果、大人向けの歴史ミステリーというより青少年向け冒険アクション映画といった雰囲気になっている。

脇役のチューリヒ保管銀行パリ支店長のユルゲン・プロフノウや、生涯を掛けて聖杯を追求する宗教史学者ティービングのイアン・マッケラン、宗教結社オプス・デイの一員で殺し屋シラスのポール・ベタニーなどは原作のイメージ通り。ただ、私は本物のルーヴル美術館の館長にインタビューしたことがあるが、本物はソニエール館長を演じたジャン=ピエール・マリエールよりずっと若く、映画好きな方だった。

現在の美術館館長は、功成り名遂げた研究者の名誉職ではなく、バリバリのやり手でなければ務まらない激務で、美術ばかりでなく様々な分野に目を配り、提携していかねばならない。だからこそ、この映画も、ルーヴルの全面協力によるロケ撮影が可能になったともいえる。

名所旧跡が多数登場!分厚い原作を2時間半にギュッと圧縮

原作の「ダ・ヴィンチ・コード」の面白さは、中世の騎士道物語に登場する聖杯伝説や十字軍をめぐる様々な謎を“コード(暗号)”というキーワードで1つに繋げたところにある。十字軍をめぐる伝説は、映画『マルタの鷹』(1931年ほか)からマンガ/アニメの「ワンピース」まで、多くの作品にネタを提供している。それだけ魅力的な謎だということだ。

そもそも上下2巻の大部な原作を2時間半に圧縮すること自体に無理があるが、誠実なロン・ハワードは、原作を大きくそれることなく適度にダイジェストしている。そのため、ジェットコースター・ムービー並に筋の展開が早く、落ち着いて物語を咀嚼する暇がないのが難だが、これは何度も見て楽しめると、いい方に解釈しよう。

映画の一番の見どころは、ルーヴル美術館、サン=シュルピス教会、テンプル教会、ロスリン礼拝堂といった原作に登場する名所旧跡が実際に映像で見られるところだ。本物の歴史の重さは何ものにも代え難く、映画に真実味を加えている。

文:齋藤敦子

『ダヴィンチコード』『天使と悪魔』『インフェルノ (2016年)』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:24時間 秋のミステリーサスペンス」で2023年11月放送

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