『ゴジラ-1.0』公開記念! 平成ゴジラに“悪役”は存在しない?『ゴジラVSスペースゴジラ』『ゴジラVSデストロイア』イッキ観再考察

『ゴジラVSスペースゴジラ』©1994 TOHO STUDIOS CO., LTD.

『VSスペゴジ』の記憶と『ゴジラ』原体験

『ゴジラVSスペースゴジラ』は平成ゴジラVSシリーズの5作目で1994年に公開された。

私は『ゴジラVSキングギドラ』から『ゴジラVSメカゴジラ』までの3本にデザインワークスとして参加し、メカデザインを行ったが、本作には参加しなかった。そのため本作に関しては制作中の状況を見学する機会もなく、完全に一般観客の立場で鑑賞することとなった。

正直言って初見のときは、それほど良い感想は持たなかった。自分が関わることができなかったという事情も多少はあるが、今思い返すとそれは自分のゴジラ映画体験が大きく関係していたようだ。

60年代“怪獣ブーム”が深層心理に与えた影響

私が初めて見たゴジラ映画は1964年の『モスラ対ゴジラ』で、今でも一番好きな作品だ。その後『怪獣総進撃』(1968年)までは公開と同時に映画館で見ていた。これはほんの4年間のことで、その間に6本のゴジラ映画が公開された。特に1964年12月の『三大怪獣 地球最大の決戦』と『怪獣大戦争』(1965年)は大作感が強く、『三大怪獣~』のときなどは正月の荻窪東宝が立ち見状態だった。この二本の間には1965年の夏に『フランケンシュタイン対地底怪獣』が公開され、さらに1966年には『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』が公開されただけではなく、テレビでは『ウルトラQ』とそれに続く『ウルトラマン』が始まり、まさに一大怪獣ブームが巻き起こったのだった。

ところが1966年12月に公開された『ゴジラ・モスラ・エビラ 南海の大決闘』は、それまでのゴジラ映画よりなんだか物足りなく感じた。その理由は舞台が大都会ではなく南海の孤島に限定されていたからだ。秘密結社の基地を破壊するシーンはあるものの、都会のビルを破壊したり自衛隊の戦車が出てくることはなかった。さらに翌年の『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』も南海の孤島が舞台。対戦怪獣も操演タイプの昆虫型と、あまり強そうなものではなかった。

おそらくこの映画体験がトラウマとなって、南海の孤島が舞台になるとゴジラ映画としては格下だと反射的に感じてしまったようだ。

『ゴジラVSスペースゴジラ』は何が異質だったか?

しかし改めて『ゴジラVSスペースゴジラ』を見直してみると、決してつまらない訳ではない。確かに前半は南海のバース島が舞台だが、他のVSシリーズもラゴス島やらインファント島、アドノア島と島がよく出てくるし、ゴジラが都市破壊を始めるのは大抵は中盤以降だ。そして『ゴジラVSスペースゴジラ』でも、後半はスペースゴジラによって環境を変えられてしまった福岡の中心地でゴジラ、スペースゴジラ、そしてMOGERAの三つ巴の熾烈な戦いが繰り広げられる。決して物足りない怪獣映画ではないのだ。

しかし『ゴジラVSスペースゴジラ』は、たしかにそれまでのVSシリーズと異なった雰囲気がある、それはGフォース隊員でもはぐれ者的な結城(柄本明)と若手の熱血隊員・新城(橋爪淳)と佐藤(米山善吉)の三人が、アサルトライフルやバイクを使ってゴジラに立ち向かうあたりに顕著だ。今までも『ゴジラVSビオランテ』で権堂一佐(峰岸徹)が抗核バクテリア弾をゴジラに打ち込む場面があったが、人間が生身でゴジラに立ち向かうという展開は稀だった。これは脚本に『あぶない刑事』(1986年~)や『西部警察』(1979年~)などのシリーズで知られる柏原寛司が参加したことによるものだろう。

後半もこの三人がMOGERAに搭乗しスペースゴジラに立ち向かう。さらに権堂の親友である結城が彼の復讐を果たそうとしていることや、科学者の千夏(吉川十和子)が権堂の妹であり結城に想いを寄せているという設定、企業マフィアに誘拐された三枝未希(小高恵美)を新城が助けたことから二人の間に淡い恋心が芽生えるなど、VSシリーズの中でも特にキャラクター同士の関係が深く物語に関わっている作品となった。

一般的に怪獣映画ではクライマックスの怪獣対怪獣の戦いになると人間が傍観者になってしまい、人間のドラマの熱気がややもすれば冷めてしまうという問題がある。しかしVSシリーズは『ゴジラVSキングギドラ』や『ゴジラVSメカゴジラ』など人間が乗ったサイボーグ怪獣やロボットが直接ゴジラと対戦することで、この問題を回避しようとしていた。そして『ゴジラVSスペースゴジラ』では、最初はアクション映画的にゴジラや企業マフィアと戦ったチームが、最後にはMOGERAに乗って戦うため人間のドラマが途切れない、アクション映画的にノリの良い怪獣映画となっているのだ。

平成ゴジラに“悪役”は存在しない? VSシリーズ最終作『ゴジラVSデストロイア』

VSシリーズ最終作の『ゴジラVSデストロイア』は1995年の12月に公開された。この年の1月には阪神淡路大震災が起き、さらに3月にはオウム真理教による地下鉄サリン事件が勃発という大変な年だった。そして3月に公開された金子修介監督の『ガメラ 大怪獣空中決戦』は多くの怪獣映画ファンに絶賛され、10月には『新世紀エヴァンゲリオン』の放送が始まっている。

『ゴジラVSデストロイア』は最初からVSシリーズの最終作と決まっており、宣伝のキャッチフレーズは「ゴジラ死す」だった。登場人物には一作目の山根博士の娘である恵美子が含まれており、当時と同じ河内桃子が演ずることで一作目とのつながりも強調され、ひとつの輪が閉じることが実感された。

VSシリーズでは常に人間はゴジラを倒そうと様々な手を考えてきたが、観客はゴジラが倒れないことを望んでいたのかもしれない。VSシリーズの発端となった1984年の『ゴジラ』は70年代の人間の味方となったゴジラではなく、原点に回帰した怖いゴジラを復活させるという企画だった。しかし、ラストシーンでゴジラが三原山の火口に落ちていくとき、小林桂樹演ずる首相はうっすら涙を浮かべている。それは、現代に出現した故に人間から攻撃されるゴジラを哀れんでいるようにも見えた。

そして『ゴジラVSビオランテ』以降、人間は様々な手段でゴジラに立ち向かうが、せいぜい日本の国土から追い払うくらいしかできない。『ゴジラVSキングギドラ』では主人公たちは真剣にゴジラを倒すことを模索するが、『ゴジラVSモスラ』ではモスラとバトラの戦いがメインで、ゴジラは脇役的な座に回ってしまう。さらに『ゴジラVSメカゴジラ』ではベビーゴジラが登場したこともあり、主人公側もメカゴジラでゴジラを倒すことにいささかためらいがあるように見受けられる。続く『ゴジラVSスペースゴジラ』では明らかに悪役はスペースゴジラだ。

では、ゴジラ以外の怪獣は恐ろしい悪役なのだろうか? ビオランテは白神博士の妄執により生み出された哀れな生命体だ。キングギドラも未来人が身勝手に作り出した怪獣であり、中盤で一度倒されてしまう。バトラも地球のために人類を滅ぼそうとするわけで、「悪」とは言い切れない。ラドンもスペースゴジラも厳密には善悪はなく、現代の地球に身の置き場がないというだけだろう。つまりVSシリーズには、かつてのガイガンやメカゴジラのような単純明快な悪役は存在しないのだ。

世界情勢における原子力とゴジラの相関性

本当にゴジラを倒すことは望まれていないのに、ゴジラは死んでしまう。それはゴジラ自身が身体の暴走を止められなくなり、メルトダウンしてしまうということだった。ゴジラが一度メルトダウンを起こすと今まで以上に人類に大きな被害を及ぼすことが想定されたため、本作で皮肉なことに人類はなんとかゴジラの暴走を食い止めようとする。

対戦相手としては1954年の最初の『ゴジラ』でゴジラを倒したオキシジェン・デストロイヤーの影響で変異した先カンブリア紀の甲殻類であるデストロイアが登場するが、正直言ってデストロイアとゴジラの対戦は本作のハイライトではない。そのためかデストロイアの最後に関しては曖昧な描き方となっている。これはやはりゴジラのメルトダウンが本作最大のテーマであったからだろう。

1954年の『ゴジラ』以降、ゴジラは“核兵器のメタファー”だと言われてきた。当時は膨大な核エネルギーの用途は原子爆弾くらいしかなかった。しかし同じ頃、アメリカでは原子力の平和利用が提案され実用原子炉の開発が始まった。そして1960年代なかば、日本でも最初の原子炉が稼働する。面白いことにそのころからゴジラは人類の味方となっていく。

原発事故から生まれた『シン・ゴジラ』、そして『ゴジラ-1.0』へ

1984年の『ゴジラ』から始まる平成のVSシリーズでは、ゴジラにカドミウム弾を打ち込んで活動を停止させたり抗核バクテリアで活動を抑えようとした。また、サイボーグ怪獣やロボットといったテクノロジーでゴジラを抹殺できないとしても、なんとか抑え込もうとした。しかし最終的にゴジラはコントロールを失いメルトダウンを起こしてしまう。このシリーズでは、ゴジラは核兵器というよりは人類の原子力利用の困難さの象徴と捉えることもできそうだ。

ゴジラのメルトダウンによる災厄は結局もう一頭のゴジラであるジュニアが放射線をすべて吸収してしまうことで事なきを得、ゴジラの物語は次のシリーズへと引き継がれていった。

しかし皮肉なことに2011年の3月、我々は実際に原子力エネルギーのコントロールがいかに難しいかを思い知らされることとなった。そして、その体験から2017年に『シン・ゴジラ』が誕生した。

さらに今年、その『シン・ゴジラ』と全く異なる新たなゴジラ映画『ゴジラ-1.0』が公開される。この映画を楽しむためには事前に多くを知らない方が良いのだが、一つ言えるのは今度の物語は『ゴジラVSスペースゴジラ』のように最初から最後まで人間とゴジラの直接の戦いを今までにないようなアイデアで描ききった映画だと言うことだ。大いに期待して良いと思う。

『ゴジラ-1.0』公開記念プレゼント【第2弾】

SNSでキャンペーンに参加するだけ!

超豪華『ゴジラ-1.0』 グッズを合計13名様にプレゼント‼

【第2弾】プレゼント内容

▼フィギュア <ムービーモンスターシリーズ>ゴジラ(2023):3名様
2023年11月に公開される新作映画『ゴジラ-1.0』登場のゴジラがソフビフィギュア『ムービーモンスターシリーズ』に登場!

▼『ゴジラ-1.0』劇場先行商品 ゴジラ-1.0 ビッグアクリルスタンド:5名様
存在感のある大きめのアクリルスタンド。

▼『ゴジラ-1.0』劇場先行商品 TシャツA:5名様
「G」と背びれのシルエットをデザインしたシンプルで着やすいデザイン。

応募期間:2023年 11月 3日 12:00 ~ 2023年 11月 26日 23:59

応募方法:
①ムービープラス【公式】Xアカウント(@movie_plus)をフォロー
②キャンペーン投稿をリポスト(リツイート)するだけ!

応募規約ほか、プレゼント詳細ページにて要確認

『ゴジラVSスペースゴジラ』『ゴジラVSデストロイア』『ゴジラVSビオランテ』『GODZILLA(1998年)』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「『ゴジラ-1.0』公開記念!2ヶ月連続ゴジラ特集」で2023年11月放送

© ディスカバリー・ジャパン株式会社