法改正で大きく前進! 実用化へ急ピッチ「ドローン宅配」の現状と可能性

とくに物流過疎地域の補完が期待されるドローン宅配(maroke / PIXTA)

ドローンが街中を飛び交い、物資を運び届けるーー。小回りの利く無人の航空機として広く知られるドローンが、日常的に空を飛び回る日が近づいている。自治体や運送会社の取り組みから、空の物流の最新事情に迫る。

複数のプロペラを有した小型ドローンが飛行する様子を目にしたことのある人は少なくないかもしれない。橋脚や建造物など、人が近づくのが困難な場所に飛び、上空から確認作業をする場面を映像等で見たという人もいるだろう。

東京五輪では、芸術的な編隊飛行で、国立競技場の上空を幻想的に彩った。ドローンはすでに、ハード面でもソフト面でも大きな進化を遂げている。ところが、産業シーンではそのポテンシャルに見合う活用がされていないのが実情だ。

ドローン宅配を阻んでいた「壁」

「壁」になっていたのは、法律だ。航空法では無人航空機については、一定の空域での飛行、または一定の飛行方法による飛行を行う場合、都度、国土交通大臣の許可・承認が必要だった。それが法改正により、2022年12月5日から緩和された。

具体的には、機体の認証、操縦ライセンスの取得、運航ルールの遵守を前提に、有人地帯での補助者なしの目視外飛行が可能に。つまり、自動車のように、機体の整備や免許証を取得すれば、街中での飛行もOKになったのだ。

そこでがぜん注目されているのが、物流シーンでのドローン活用だ。物流業界は2024年問題もあり、危機的状況にある。渋滞や道路網が整っていない場所には移動困難という物理的制約もある。

一方、上を見上げれば広大な空が広がる。航空法の改正で、空路の自由度が高まり、ドローン活用の可能性も大きく拡がった。緊急時、あるいは過疎地、僻地等は空路が有力な移動手段となる。きめの細かい物流インフラの充実は、より住みよいまちづくりにつながるため、自治体も積極的で、すでに実証実験などをスタートさせている地域もある。

自治体も空路による宅配の実現に積極的

愛知県は、社会課題の解決と地域活性化を図る官民連携プロジェクトの一環で、2023年5月、「あいちモビリティイノベーションプロジェクト」を立ち上げた。その中でドローンや空飛ぶ車等の空路の有効活用の早期化を目指している。

10月26日には、「ジャパンモビリティショー2023」(東京ビッグサイト=東京・江東区)の会場で、50㎏の荷物を50キロ先まで運べるドローン「SORA-MICHI」を世界初公開。陸路とのシームレスなモビリティの実現へ、精力的に動いている。

コンパクトで空陸両用のドローンでモビリティの最適化を目指す愛知県(10月26日東京・江東区 / 弁護士JP)

同機は、全長約3メートル、全高約1.2メートル、全幅約2.7メートルのコンパクトさながら、積載可能重量が大きく、15メートルの風速、雪雨でも飛行可能な耐風性・耐候性を備える。輸送機としてのドローンの弱点をクリアするだけでなく、着陸後の移動も考慮し、駆動輪も備え、まさに空陸両用の”空飛ぶ軽トラ”として、早期の社会実装へ向け、実証実験が繰り返されている。

東京都も、都内でのドローン物流の早期社会実装を目指し、運送大手の佐川急便と連携しながら急ピッチで実用化へ向けた取り組みを進めている。

10月に都内で山間地域の生活利便性向上と持続可能な配送スキームの構築へ向け実証事件を行った佐川急便は、実用化までの期日を「2025年に一部エリアで」と設定。ドローン宅配で起こりうるあらゆる状況を実証実験で見極めながら、2年後の実用化をイメージする。

現状では、「雨や風速などの気候条件によって、運航ができない日が多いというのが最大の課題」とし、メーカーと連携し、新型機の製造を進めている。実用化されれば、店舗や営業所などから、ドローンがダイレクトで配達困難地域へ物資を輸送する想定だ。

ドローン宅配は大量輸送が難しく、バッテリーの問題で長時間・長距離に弱点があるが、緊急時や移動困難エリア、あるいはラストワンマイルに限定すれば、逆に物流過疎エリアを埋める有効な物流手段となるポテンシャルを秘める。

法改正による空路解禁で輸送手段としての注目度が高まるドローン。前述の愛知県は、”空飛ぶクルマ”などとも連携し、「空と人」、「空とモノ」、「道と人」、「道とモノ」の4領域をシームレスにする次世代モビリティ革命の実現を2030年をめどに目指しており、今後数年は、日本上空を舞台にした”空の産業革命”が加速することになりそうだ。

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