ポルシェが目論む約12件のアップデート/超レアな雨/「キャリアを傷つける」決定etc.【WECバーレーン木曜Topics】

 11月2日、バーレーンのバーレーン・インターナショナル・サーキットでは、WEC世界耐久選手権第7戦のフリープラクティスが始まった。すべてのタイトルが決定する最終戦となる大一番は、トヨタGAZOO Racingのワン・ツーという形で初日の走行を終えている。

 最終戦ということで、オフや来季に向けた話題も豊富に聞かれるバーレーンのパドックから、各種トピックスをお届けする。

■突然の雨もポジティブに

 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマネージングディレクター、ジョナサン・ディウグイドによると、木曜日のフリープラクティス1は強風と短時間の雨で中断されたため、他のプラクティスセッションにスリックタイヤを持ち越すことができたという。

 ペンスキーは主にバーレーンを初めて走るローレンス・ファントールとデイン・キャメロンを優先して乗せるために、ミックス・コンディションとなったFP1を活用した。

「FP2とFP3には、より多くのタイヤを投入できる」とディウグイド。

「おそらく人々はすべてのタイヤを使ってレースを走ることになると思うが、我々は部分的なタイヤ交換などを含むレースの準備にも重点を置くつもりだ。(1セットの)タイヤの周回数はかなり上がるだろうし、通常の(6時間レースの)アロケーションでは行わない予選シミュレーションも行うかもしれないが、一般的にはそれが我々の計画にあまり影響を与えることはないだろう」

 金曜日の予選では雨が「わずかに降る可能性がある」とディウグイドは語っており、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツはFP1のウエットコンディションでも走行することを選択した。

■来季LMGT3のアストンマーティン陣営は?

 チーム代表兼ドライバーのイアン・ジェームスによれば、ハート・オブ・レーシングは来年もアストンマーティン・バンテージGT3で、LMGT3クラスへ1台体制でのエントリーを計画しており、WECでの2台体制への拡大は否定している。

 WECのセレクション委員会からエントリー確認を受け取った場合、2台目のバンテージはDステーション・レーシングが走らせる可能性が高いものと思われる。

コース下見を行うDステーション・レーシングのキャスパー・スティーブンソン、藤井誠暢、リアム・タルボットら

 ジェームスによれば、ハート・オブ・レーシングが最近発表した2025年からのWECおよびIMSAにおけるアストンマーティン・ヴァルキリーLMHプロジェクトは、その後も話が進んでいるという。

「設計段階はアストン、AMPT(アストンマーティン・パフォーマンス・テクノロジーズ)、マルチマチック、そしてそれらすべての人々と協力しているので、今はそこまで関与する必要はない。我々はある程度関与しているが、我々の役割がさらに強化されるのは来年になる」とジェームス。

 また、ブロンズドライバーであるジェームスは、2024年はLMGT3クラスでステアリングを握ることになるものの、それが「おそらく」ドライバーとしての最終年になる、という。その後はハイパーカー/GTPプログラムにチーム代表として集中することになる可能性が高い、と彼は語った。

今季途中から、ノースウエストAMRのエントリーを引き継ぎ、LMGTEアマクラスに参戦しているハート・オブ・レーシングのアストンマーティン・バンテージAMR

■ドライバー人生を左右するレーティング

 現在のLMGTEアマクラスのルールを引き継ぐ形で、来季のLMGT3ではブロンズドライバーが予選アタックを行う必要がある。

 ドライバーのラインアップ構成要件にも変更はなく、各ラインアップにはひとりのブロンズドライバーが必須となり、さらにひとりのブロンズまたはシルバーにレーティングされるドライバーが必要となる。

 Dステーション・レーシングのシルバードライバー、キャスパー・スティーブンソンは2024年、FIAのドライバー・カテゴライゼーションにおいて、ゴールドへとアップグレードされることになっている。

「これはキャリアを傷つける決定だ。それは人の人生を変えてしまう」とスティーブンソンは語り、彼の来年のプログラムの選択肢が無くなったと述べた。

 なお、現在LMGTEアマに参戦中のサラ・ボビーやアハマド・アル・ハーティらは、一度はシルバーに格上げされたものの、異議申し立てを経てブロンズを取り戻している。

サラ・ボビーらがドライブするアイアン・デイムスの85号車ポルシェ911 RSR-19

■トヨタ、チーム内ルールは「通常運行」

 チーム内で2台のクルーがハイパーカークラスのドライバーズタイトルをかけて対戦するにもかかわらず、トヨタは通常のチーム内ルールを採用する予定だ。

 テクニカルディレクターのパスカル・バセロンは「我々は、愚かなリスクを冒さずに、より速いクルマを前に送りたいと考えている」と語った。

「これはどんな状況にも当てはまる。そしておそらく、レースの最終ピットストップでは(ポジションが)フリーズしていることだろう」

ACOピエール・フィヨン会長らと話すトヨタWECチームのテクニカル・ディレクター、パスカル・バセロン

 ミシュラン・モータースポーツのエンデュランス・レースマネジャーのピエール・アルベスは、ハイパーカーチームが土曜日の決勝でタイヤ戦略にどのようにアプローチするかに注目している。

「すべてのハイパーカーチームがレースのスタートにハードコンパウンドを装着することを予想しているが、パフォーマンスや安定性を損なうことなくミディアムに切り替える理想的な瞬間がいつ来るのかは、興味深いものとなる」と彼は言った。

■週明けにミシュランのタイヤテストが予定

 現在ハイパーカークラスにエントリーするマニュファクチャラーはすべて、来週バーレーン・インターナショナル・サーキットでミシュランのタイヤテストに参加する予定だ。

 キャデラックは当初、ミシュランの2025年シリーズのオプションを評価する目的で欠席する予定だったが、このアメリカのメーカーはテストに参加するために(バーレーンからの)貨物の出発を遅らせた。

 キャデラックのチームマネージャー兼ストラテジストのスティーブン・ミタスは次のように述べている。「我々は12月にスペインでテストを行うが、12月と2月にはセブリングとデイトナでやるべきことがたくさんあるのは明らかだ」。

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 走行2日目となる11月3日(金)は現地時間正午(日本時間18時)、FP3の60分間の走行からWECのセッションが始まる。

バーレーン・インターナショナル・サーキットの日没は17時前。3日金曜は、この時刻をまたいで予選が行われる
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツとハーツ・チーム・JOTAのポルシェ963
キャデラック・レーシングの2号車キャデラックVシリーズ.R

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