「挑戦に耐えられる強い精神力持った選手にきてほしい」プロ野球2軍に新規参入内定「ハヤテ」がトライアウトを行うワケ

2024シーズンからプロ野球の2軍に新規参入することが内定している「ハヤテ」球団が11月3日、本拠地とする清水庵原球場(静岡市清水区)で球団独自のトライアウト(入団テスト)を実施しました。すべてがゼロからのスタートとなる「ハヤテ」はドラフト会議に参加できず、独自で集めなければいけません。

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「ハヤテ」球団のホームグラウンドとなる清水庵原球場には、静岡の地でプロ野球選手を目指す18歳から38歳までの96人が集いました。その顔ぶれも、現役高校生から米マイナーリーグや国内の独立リーグでプレーした経験を持つ強者など、多種多彩です。

静岡が生んだ名選手が首脳陣に

3日に行われた1次テストでは、50メートルダッシュや跳躍力を見るテスト、遠投など、全部で10の種目で試験が行われ、静岡が生んだ名選手、山下大輔GM(71)=元横浜監督、静岡市清水区出身=と赤堀元之新監督(53)=元近鉄投手、静岡県藤枝市出身=が、目を光らせました。

静岡高校を卒業後、プロの世界に飛び込んだ赤堀新監督は、「いままで静岡から離れていたので、このタイミングで静岡に戻って来て恩返しできることは、本当にうれしい。挑戦に耐えられる精神力を持った選手にきてほしい」、また、山下GMは「新チームへの注目度は高い。まず育成のチーム、若いチーム、活気のあるチームを作っていきたい」と意気込みをみせます。

この日のテストでは、飛び入り参加した選手をめぐって、ちょっとした“騒ぎ”も。参加名簿に名前のない外国籍選手が身に着けていたのは、とあるNPB球団の練習着。遠投でいきなり、100メートル超えをみせると報道陣は騒然となります。
「元メジャーリーガーらしい」
「自由契約になったから参加したようだ」
話はどんどん膨らみましたが、本人に確認したところ、まったくの別人と判明、とんだカラ騒ぎでした。

「球場に新たな命が吹き込まれた」

会場には、難波喬司静岡市長が視察に訪れ、公式戦開催に向けて改修や修繕が必要となる部分を自らの目で確認。外野芝生席では「スペースが広いので、従来とは違う使い方ができるかもしれない」とアイデアを膨らませていました。

「この球場がプロ球団に、本拠地として使ってもらえるということで新たな命が吹き込まれたと思っている。庵原球場だからこそできることがある。球団を全力で支えて地域の誇りとなる球団に」と新球団への支援を約束しました。

また、スタンドには、静岡市長時代、プロ野球球団の誘致に奔走した田辺信宏さん(62)の姿も。「こんなに多くの選手が参加してくれた。若い人たちの“夢の場所”を提供することに関われたかと思うとジーンとくる。たとえ『難しい』とされたことでも、あきらめないでよかった」と感慨深げにテストに挑む選手たちを見つめていました。

「ハヤテ」球団とは?2軍とは?

2024シーズンから新潟アルビレックスBCとともに、プロ野球2軍に新規参入することが内定した「ハヤテ」球団を運営するのは、金融業やスタートアップ企業への投資事業などを手掛けるハヤテグループ。「ハヤテ223(フジサン)」は、あくまで運営会社の名前であって、球団名やチームカラーなどはあらためて決めるそうです。

「ハヤテ」球団は規定により、2023年のドラフト会議には参加できませんでした。そこで、「ハヤテ」球団は独自のトライアウトを開催したほか、11月15日に行われるNPBの12球団合同トライアウトに参加した選手から声を掛けて契約するなどして、チーム作りを急ピッチに進めていくとのことです。

では、「ハヤテ」球団が参入しようとしている「プロ野球2軍」とは、そもそも何なのか。NPBは支配下登録選手70人のうち、2023シーズンは31人が1軍登録、そのうち26人がベンチに入ることができます。それ以外の選手と育成選手がプレーするのが2軍です。「ファーム」とも呼ばれ、英語で農場、牧場を意味する「ファーム」は、「若手を育てる場所」という意味もあります。

「ハヤテ」球団が所属するのは、ウエスタンリーグ。現在、中日ドラゴンズ、オリックスバファローズ、阪神タイガース、広島カープ、福岡ソフトバンクホークスの5球団が名を連ねていて、「ハヤテ」球団が入ることで6球団、偶数となります。

そもそも、6球団ずつだったイースタンとウエスタンがいびつな形になったのは、2004年の球界再編。当時の近鉄とオリックスが合併し、ひとつ空いた枠に、仙台をホームとする東北楽天ゴールデンイーグルスが新規参入したことで、イースタン7球団に対し、ウエスタン5球団に。20年の時を経て、再びの“新規参入”で、ようやく両リーグともに“元の姿”に戻ります。

3日の1次テストでは48人が選考を突破。4日に行われる2次テストには、1次選考を免除されたNPB経験者6人を加えた54人が参加する予定で、最終的には20人程度が「ハヤテ」球団1期生として入団する見通しです。まったくのゼロから始まった「ハヤテ」球団の冒険から目が離せません。

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