韓国「芸能人麻薬使用」事件 疑惑の舞台 “ルームサロン”の知られざる内情とは?

ソウル・江南(カンナム)エリアは富裕層が集まる繁華街として名高い(aomam / PIXTA)

「仁川警察庁が麻薬使用容疑で捜査対象に上げている10人のなかには、アカデミー賞受賞作『パラサイト 半地下の家族』や『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』などの人気ドラマに出演していた俳優のイ・ソンギュン(48)やBIGBANのGーDORAGON(35)らが含まれており、イはすでに警察署に出頭。薬物の簡易検査も行われています。事件は今後、政財界に広がる恐れもあり、事態は収拾する気配はありません」(韓国人ジャーナリスト)

韓国では “麻薬汚染”が社会問題化

9月中旬。韓国警察は「ソウル江南の遊興酒店で麻薬が流通されている」との情報を得て捜査を開始。情報に確信を得た韓国警察は同遊興酒店の女性室長A(29)をはじめとした関係者らを逮捕した――。AはイやG―DORAGONが「麻薬を投与していた」と供述。イに至っては、Aの部屋で“大麻を吸引していた”と現地では報じられている。

前出の韓国人ジャーナリストが韓国の麻薬汚染事情について説明する。

「韓国では昨今深刻な麻薬汚染が広がっており社会問題化しています。今年の4月には江南で飲料水の試飲と偽り青少年らに麻薬入りの飲料を提供し両親らを脅迫するといった事件も起きています。深刻な麻薬汚染の事態を重く見た政府はユン・ソンニョル大統領の側近で次期大統領候補の呼び名の高い法務部長官(法務大臣)のハン・ドンフンが自ら陣頭指揮を執り、麻薬撲滅に取り組んでいます」

個室“ルームサロン”の気密性

今回の一連の大物芸能人らへの捜査は前出の韓国人ジャーナリストが説明したような国内事情からの『一罰百戒』的な要素もあると考えられる。その一方、世間の注目は事件の舞台となった『遊興酒店』にも集まっているという。

「遊興酒店と報じられているのは日本で言う高級クラブのことで韓国ではルームサロンとも呼ばれています。“ルーム”の名の通り、入店すると店側から数人から10数人が入れるような個室に通されます。内装は豪華で広めのカラオケルームといったイメージで、価格設定も店によって違います。今回の事件の舞台となった店は顧客もハイレベルで酒代は800万~1000万ウォン(80万円~100万円)と言われています」(同前)

そのような高額な価格設定と安心して遊べる“機密性”から、芸能人をはじめとした政財界の人物らが利用するとされるルームサロンだが、今回の事件ではイやG―DORAGONと同店の女性室長Aとの関係性も浮き彫りとなった。前出のジャーナリストが続ける。

「イもG―DORAGONもA室長の顧客でした。A室長は自身の部屋でイが『数回にわたり大麻を投与していた』と供述しており、二人の通話記録を確認中です。イは現在、A室長に対して恐喝容疑で仁川地検に刑事告訴しています」

“室長”の役割とは?

韓国の警察当局はイが「A室長から麻薬吸引の暴露を巡って脅されていた」(同前)と見ているというが、日本では耳慣れない“室長”という役職。いったいどのような役割なのだろうか? ルームサロンをよく知る現地駐在の日本人男性は室長について「女性たちの仕切り役です」と説明する。

「室長は一般の会社組織でも存在する中間管理職出来な役職ですが、今回のように水商売における“室長”というのは日本で言うチーママのような立場です」

そのほとんどが元ホステス経験者で30代前後の女性が多いという室長は個々の店と契約し、顧客のさまざまな要望に応えるという。現地駐在日本人男性が続ける。

「例えば顧客が店に気に入った女性がいたとすれば、女性との間に入って一晩の金額交渉なども行います」

今回の事件で図らずもクローズアップされることとなったルームサロンと室長の存在……。イはすでに麻薬類管理法上大麻と向精神薬使用容疑で不拘束立件されており、「出国禁止措置が取られている」(前出のジャーナリスト)という。

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