カスタマー『963』を駆るダ・コスタのWEC離脱。背景に「100%集中」を求めるポルシェの決定

 ポルシェ・モータースポーツの責任者であるトーマス・ローデンバッハは、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタが来シーズン、WEC世界耐久選手権から離れることについて言及し、ポルトガル人ドライバーがABB FIAフォーミュラE世界選手権に「100パーセント」集中することをポルシェが決定したことを明らかにした。

 スポーツカーレースのスタードライバーのひとりであるダ・コスタは今週初め、4日(土)に決勝レースが行われるバーレーン8時間レースをもってハーツ・チーム・JOTAを離れ、今後はポルシェのワークスドライバーとして参戦する電動フォーミュラ選手権に専念する、と発表した。

 ダ・コスタは2022-23年のフォーミュラEでシリーズランキングで9位に終わった。ケープタウンで移籍後初となる1勝を挙げたが、チームメイトのパスカル・ウェーレインは3勝をマークしてランキング4位となっている。

 Sportscar365は、両ドライバーがフォーミュラEのシーズン中に他のレースに出場できないことを理解している。これは、ジェイク・デニス(アバランチ・アンドレッティ・フォーミュラE)がポルシェのカスタマーエントリーで優勝したチャンピオンシップに、完全な焦点を当てるためだ。

「(ダ・コスタに)期待されているのは、レースとチャンピオンシップで勝つことだ」とローデンバッハは金曜日にバーレーンで記者団に語った。

「フォーミュラEに目を向けると、私たちは今年かなり進歩した。これまででもっとも強いシーズンだったと思う。しかし最終的には100パーセントの正解ではなかった」

「もちろん、我々はチームタイトルも獲りたかった。将来的にマニュファクチャラー選手権ができれば、そこでの優勝もあるかもしれない」

「改善の余地がある限り、すべてを検討する必要がある。私たちはどのシリーズでも一緒に座ってポイントを見て、すべてのレースを振り返る。我々がどこでミスをしたかなどを書き出すんだ」

「非常に明確なポイントは、予選のパフォーマンスだ。できることのひとつはドライバーに100パーセント集中できる環境を与えることだ。それが私たちが選んだことなんだ」

アントニオ・フェリック・ダ・コスタが所属するハーツ・チーム・JOTAの38号車ポルシェ963 2023ル・マン24時間レース

 Sportscar365から、ダ・コスタがル・マン24時間レースを1回限りのWEC参戦として戦うことができるかどうかを尋ねられたローデンバッハは、次のように答えた。

「我々はそれを非常に明確にしたと思う。フォーミュラEのシーズンを通して、彼にはひとつのことに集中してもらいたい」

「もし、フォーミュラEのシーズンがル・マンの前に中止されることがあれば、それについて話し合うことができる」と彼は付け加えた。

「もう一度説明すると、アントニオは偉大なレーシングドライバーであり、素晴らしい男だ。私も彼のことが大好きだ」

「しかし繰り返しになるが、これはプロのレースであり、最終的に重要なのは結果だけだ。少なくとも2024年シーズンは、ふたりのドライバーがメインの仕事に100パーセント集中できるようなルートを選びたい。それだけだ」

「それは来年に向けた決定事項であり、その後のことはいずれ分かるだろう」

 ドイツのメーカーは以前にも、アンドレ・ロッテラー(アンドレッティ・フォーミュラE)にル・マンのテストデーと重なったジャカルタE-Prixを欠場させるなど、ドライバーに関する決定を下したことがある。

「シーズンのほとんどをリードしていれば、ドライバーとしてもチームとしても、そこで勝ちたいと思っているはず」とローデンバッハ。

「タフなチャンピオンシップであり、誤解しないでほしい。(競争は)とても近いんだ」

「いい一年だった。だが、さっきも言ったように、私たちはつねにトップを目指している。このチームでは1位になれなかった。だから(来年の)目標は明確なんだ」

「これは標準的な手段だが、どうすれば改善できるかを考える。エンジニアリング、技術、運用、戦略……何であれ隅々まで調べなければならないし、それが我々がすべきことなんだ」

ポルシェ・モータースポーツの“ヘッド”を務めるトーマス・ローデンバッハ
フォーミュラEで、ポルシェ9XXエレクトリックをドライブするアントニオ・フェリック・ダ・コスタ

© 株式会社三栄