松下信治「迷惑はかけたくないですけど……まあ、かけるかな」チャンピオン争いの鍵を握る予選2番手Astemo NSX

 スーパーGT最終戦、第8戦モビリティリゾートもてぎの予選で、ホンダNSX勢で最上位グリッドを獲得した17号車Astemo NSX-GT。ポールポジションの3号車Niterra MOTUL Z、そして3番手の36号車au TOM’S GR Supraのチャンピオン争いの間に入るかたちとなり、俄然、レースで注目される車両となった。その予選、翌日の決勝に向けて17号車の松下信治、田坂泰啓エンジニアに聞いた。

 塚越広大が予選Q1を担当した17号車Astemo NSX-GTは、Q1を7番手で通過。予選Q2は松下信治が担当して2番手タイムをマーク。ホンダ勢、そしてブリヂストンタイヤ勢で最上位のグリッドを獲得することになった。

「Q2ではベストを尽くせたと思いますが、ちょっと思ったよりミシュランが速すぎましたね。ミシュラン勢のチームは(チャンピオンシップを考えると)前に並ばないといけないと思うので、そういうタイヤを持ってきていると思うので、そのタイヤがレースでどこまで残るのか。僕たちにとって期待しているところというか、狙い目なところですね」と、話すのはQ2を担当した松下。

 クルマは、持ち込みのセットアップからかなりの手応えがあったようだ。

「フリー走行でもいつもの調整をしましたが、ベースは良かったので、そこまで大きく悩むようなことはなかったですね。ただ、気温が上下していたので、そこに対しての僕たちのアプローチが間違った方向にいかないように、セットアップを進めました」

 そして予選では、「自分たちのパフォーマンスは全部出し切ったと思っています」と松下。「クルマはブレーキングが良かったですね。ダウンフォースもしっかりしていて、NSXの良さがすごく出せていると思います」と、会心のアタックを披露した。

 今回、同じNSX勢の中でも、頭ひとつ抜けたパフォーマンスを見せた17号車Astemo NSX-GT。担当の田坂泰啓エンジニアに、今回のセットアップのキモを聞いた。

「今回のブレーキングは、アンチダイブの部分ですよね」と田坂エンジニア。アンチダイブについて、詳しく聞く。

「ブレーキを踏んだらどんなクルマも前のめりになりますが、ジオメトリーの部分で今は普通の乗用車も100パーセント、アンチダイブがかかっている。最近の乗用車でどんなにハードブレーキングしても、制御が働いで前のめりにはなかなかならないですよね」と田坂エンジニア。

「それはジオメトリーを制御しているからなんですけど、レーシングカーではジオメトリーを制御しても、タイヤが潰れる部分が大きいので、やっぱりノーズダイブ(前のめりの姿勢)が起きるんですよね。その動き、そして沈み込むブレーキの時のクルマの姿勢を、ドライバーにとって心地よいスピードとかタイミングで沈み込むようにセットアップするのが大事で、そのちょうどいいところが今回、うまくいったのかなと思います」と、説明する。

 もちろん、そのセットアップの具体的な部分は、足回り。他のNSX勢とは、ちょっとした味付け程度の部分が違うようだが、そのわずかな違いがこのストップ&ゴーのコース特性が特徴的なもてぎで、重要な要素としてタイム差に現れてくるようだ。

 3号車と36号車のチャンピオンを争う2台に挟まれて臨む決勝、松下はどのような気持ちでレースに挑むのか。

「まあ、明日の決勝は全開ですね。後ろからトップをぶち抜きます。僕らはチャンピオン関係ないので知らないっす(笑)。迷惑はかけたくないですけど……まあ、かけるかな(苦笑)。トップにミシュラン、後ろに36号車がいますけど、僕らは出し惜しみせずガンガン攻めるだけです。まあ、出し惜しみするものもないですしね(笑)。頑張ります」
 
 優勝争いにも、チャンピオン争いにも関わるキーチームとなる17号車Astemo。3号車のミシュランはどのようなレースペースになるのか、そして17号車とのトップ争いはどのような展開になるのか……決勝はまた、まったく予想がつかないレース展開が繰り広げられることになりそうだ。

決勝レースでチャンピオン争いの鍵を握る17号車Astemo NSX-GT

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