複業が関係人口増加の起爆剤に!累計400名が参画した地方自治体プロジェクトから見えること

最近よく耳にすることが増えた「関係人口」というワード。移住した定住人口でもなく、観光で訪れた交流人口でもない、地域の人々と多様に関わる人のことを指します。東京一極集中や、高齢化、人口減少などにより、地域づくりの担い手不足が課題となっている中で注目されています。

関係人口には2種類あり、ファンベースと仕事ベースに大別されます。ファンベースの関わり方は、お祭りやイベントに参加したり、ふるさと納税で支援したりすること、仕事ベースの関わり方は、複業でその地域の企業に関わったり、その地域でテレワークをしたりすることが挙げられます。

関係人口と一口に言ってもさまざまな関わり方がある中で、今回の記事では「複業」をテーマに関係人口の在り方について考察します。

オンラインで複業というつながりから、移住につながるケースも

私が代表を務めるAnother worksでは、複業したい人と企業や自治体をマッチングする「複業クラウド」を運営しています。これまで100以上の自治体と連携して複業という手段で関係人口を創出する取り組みを行ってきました。

全国各地に住んでいる累計約400名がさまざまな自治体に複業で参画しており、関係人口の創出に寄与しています。業務は基本的にオンラインで、週1回程度の打ち合わせがメイン、約6カ月間のプロジェクトに入ってもらいます。オンラインが中心にはなりますが、期間中は実際に現地に何度か足を運ぶ方も多くいます。また、複業がきっかけで移住したというケースも生まれています。

最初は複業という仕事ベースでの関わりでしたが、それをきっかけに現地に足を運んだり、移住したりと、より深い関係になっていくのです。第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」でも、関係人口を創出するためは、まずは必ずしも現地を訪れない形で地方とのつながりを築くことが大切だと記載があります。

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地方の暮らしを体験する、地方と都会の暮らしを使い分ける、ボランティア等で定期的に関わるといった取組に加え、オンライン関係人口など必ずしも現地を訪れない形での取組等も含め、東京などの都市部の人材による地方における事業活動を通じた関わりを拡大・深化させることが重要である。また、副業・兼業、テレワーク、ワーケーションといった多様な形で地域と関わりを持つ都市部の人材が、地域にはない知識・知見を広く共有・活用する等、関係人口は地域ごと、人ごとに多様な形態があるものと捉えることが重要である。

参照:第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」 (2020改訂版)56頁より抜粋

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地域に自分の経験を活かしたい人が6割

当社が手掛ける自治体と複業人材のマッチングにおいては、ほとんどが金銭報酬のないプロボノ的な関わり方です。無償でも地域に関わりたいという熱意を持った方が多いのです。

自治体求人にエントリーした方へ実施したアンケート*では「今回のエントリーの決め手となった理由を教えて下さい」という問いに対して「案件に対して、自分の経験が活かせそうだったから」と回答した方は全体の約6割でした。

次いで「地域への興味・関心があるから」と回答したのは約2割となり、関係人口の創出にも寄与する取り組みであると言えます。

*集計期間:2022年9月6日~2023年7月11日、回答者数1225名

詳細はこちらをご覧ください。

いかがでしたでしょうか。「まずは複業」での関わり方を求めている人が多くいる中で、仕事ベースでの関係人口創出が今後より注目されるのではないでしょうか。

前回の記事では、石川県能登町の複業人材登用事例についてまとめております。こちらも併せてご覧ください。

寄稿者 大林尚朝(おおばやし・なおとも) ㈱Another works代表取締役

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