「母と挑んだドラフト会議」 広島カープ3位指名 滝田一希投手(星槎道都大)

広島カープのドラフト3位・滝田一希 投手(北海道・星槎道都大学)。指名された瞬間、その目にはあふれるものがありました。その背景には1人で育ててくれた、今は亡き母の存在がありました。

カープからドラフト3位指名された 滝田一希 投手(21)。最速150キロを超えるストレートと、落差のあるチェンジアップが魅力のこれからの伸びしろが楽しみなサウスポーです。

ドラフト会議の翌日(10月27日)、さっそく滝田投手の人柄を探るべく、北海道は北広島市へ向かいました。北広島市といえば、日本ハムの新たな本拠地エスコンフィールドがある街でもあります。

街は、日本ハム一色。郵便ポストからコンビニまでファイターズ仕様。なんか広島市にも似ている街でした。

エスコンフィールドから車で10分、北海道の自然に囲まれた場所に星槎道都大学の野球場はありました。

星槎道都大 滝田一希 投手
「恥ずかしいですね」

― カープから指名された瞬間はどういう気持ち?
「2位で左ピッチャー( 高太一 投手)を獲ったので、ちょっとないかなと思っていたんですけど、『た』って言われた瞬間にぱっと上を向いて、そしたら自分だったのでびっくりしました。高校3年生のときには見る側だったので、初めての経験といいますか、すごい、なんか鳥肌が立ちました」

ドラフト指名の瞬間、滝田投手の目にはあふれるものがありました。その背景には1人で育ててくれた、今は亡き母の存在がありました。

滝田一希 投手
「自分たちきょうだいを立派にさせたいというのを聞いたので、本当にいい母親でしたね」

ドラフト指名の瞬間、喜びとともにあふれた感情は、女手一つで育ててくれた、今は亡き母への感謝でした。

滝田投手は6人きょうだいの5番目。滝田投手が6歳のころから母1人で子どもたちを育ててきました。

滝田一希 投手
「朝5時から夜中の1時過ぎまでほぼ毎日のように働いていて、でも、それでも弱音を言っていなかったので。『プロを目指そう』って、ずっと母とそういう話をしていたので。いろんな欲しいものを言っていましたね。車とかもそうですし…。『契約金、全部もらう』とかも言っていたので(笑)」

誰よりも母・美智子さんが応援していたプロ野球選手の夢…。着実に力をつけ、リーグの開幕投手を務めるなど、プロへの階段を少しずつ歩み始めた大学3年生の春、53歳の母との突然の別れが…

滝田一希 投手
「練習から帰ってきて、姉から電話がかかってきて、けっこうあせっていたので何かなと思ったら、母が倒れたって聞いて。でも、自分の中ではまだ生きているからだいじょうぶだと思いながら。会うまでわからないから、まず会おうと思って。地元の診療所に行って、母を見た瞬間、本当にくやしい感情とか、いろいろな感情が自分に対してこみ上げてきて…」

母が亡くなり、一時は野球をやる意味さえ見失ってしまった滝田投手。再び、その闘志に火を灯してくれたのは、野球部・二宮至 監督の言葉でした。

滝田一希 投手
「監督さんには『プロを目指して、契約金で立派な墓を建てろ』って言ってもらいました。そこからは本当にやるしかないなって。いろいろと考えましたけど、母もいろいろと楽しみにしていた部分もあったので、みんなの夢を自分が達成しようっていう心になって、そこからはすごくがんばりましたね」

星槎道都大学 野球部 二宮監至 監督
「まず一歩を踏み出すっていうか、苦しいけれど一歩踏み出す勇気をどうやったら、こいつ、出してくれるだろうという思いで厳しい言葉を言ったんだけど、でも、それがよかったのかな」

きょうだい、監督、そして、なによりも母のため―。みんなでつかんだプロへの道を滝田投手は歩み始めます。

滝田一希 投手
「今は本当にスタートラインに立ったばかりなので、ここから活躍していくことが、やっぱりプロ野球選手って言われますし、同じ境遇の人とかもそうですけど、元気づけられたらいいなと、そういう選手を目指して今後はもっともっとがんばっていきたいなと思います」

◇ ◇ ◇

田村友里 キャスター
なんかお母さんの思いも背負ってドラフトを迎えていたんだなと思うと、こみ上げてくるものがあります。

青山高治 キャスター
だから自分が指名を受ける瞬間は、お母さんの写真と一緒に迎えようと思っていたんでしょうね。

石田充 アナウンサー
その瞬間を一緒に迎えたかったという思いは強かったと思うんですけれども、ぜひカープのユニホームを着て、空から見守ってくれるお母さんに早く、これぞ滝田一希のピッチングなんだっていうのを見せてもらいたいです。

RCC野球解説者 天谷宗一郎 さん
どん底だったと思うんです。そこからはい上がるタフさというのは絶対、プロには必要なところだと思うし、それはつなげてほしいなと思います。

(RCC「イマナマ!」カーチカチ!テレビより)

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