近年賞レースで珍しい「厳しい審査評」に注目、ytv漫才新人賞

2024年春に開催される若手漫才師たちの登竜門『第13回ytv漫才新人賞決定戦』(読売テレビ)への出場権をかけて11月5日、事前ROUND2が放送された。12組による熱き戦いはもちろん、今回は審査員の鋭いコメントも見どころのひとつであった。

左から審査員のお~い!久馬(ザ・プラン9)、林健(ギャロップ)、久保田かずのぶ (とろサーモン)、大村朋宏(トータルテンボス)(C)ytv

取材・文/田辺ユウキ

■ 同大会の色となるか? 歯に衣着せぬ「審査評」

左から2位通過の空前メテオ(茶屋、大門正尚)、1位通過のドーナツ・ピーナツ(ピーナツ、ドーナツ)

この大会の出場資格は、大阪を拠点にする芸歴10年までの漫才師で、持ち時間は3分。3回にわたっておこなわれるROUNDの各上位2組、計6組が決勝に進み、タイトルを争う。

ROUND1(9月10日放送)のぐろう、ハイツ友の会に続き、ROUND2では、今年ラストイヤーのドーナツ・ピーナツ、芸歴4年目の新鋭・空前メテオの2組が決定戦進出を決めた。

ROUND2で興味深かったのが4名の審査員による「審査評」だ。ROUND1では審査員たちが若手芸人たちの漫才について「レベルが高い」と口を揃えたように、漫才師たちのレベルが年々アップしているため、大型の賞レースでは審査員から厳しい意見が飛び出すことは少なくなってきた。

しかし今回は、このところの大型の賞レースの審査としては珍しくシビアな目線が向けられる場面が目立った。なかでも、『THE SECOND〜漫才トーナメント〜』初代王者・ギャロップの林健の存在が際立った。トップバッターのマーメイドにはオチの付け方の物足りなさを指摘し、ぎょうぶに対しても「オチ以外は完ぺき。オチだけもうちょっとどうにかならんかったかな」と伝えた。

今回が賞レース初審査員となる林健(ギャロップ)(C)ytv

もっとも印象的だったのが、実力者である天才ピアニストへのコメント。漫才として披露される物語や設定は嘘(フィクション)も多く含められるものだが、林は天才ピアニストの嘘の導入について「腑に落ちないまま進んで、なんでこれをやってるんやろうと思って見てしまった。僕は(ネタに)入り込みにくかった」と一切濁すことなく、良い評価ができなかったことを話した。

■ 進化を遂げたドーナツ・ピーナツ、久保田も絶賛

共に福岡県に生まれNSC東京校を卒業するも、現在は大阪を拠点に活動しているドーナツ・ピーナツ

出場者たちの興奮冷めやらぬ収録直後、決勝進出を決めた2組にインタビュー。今回1位通過したドーナツ・ピーナツは前年の同大会で、審査員のとろサーモン・久保田かずのぶから「ツッコミをボケに寄せすぎているのではないか」と審査されていた。

ボケ担当のピーナツは当時を振りかえり、「『このツッコミがしたいがためのボケじゃないか』ということでしたよね。そのときのネタは確かにそういう構成で作っただけなので、意識することはそれほどなかったのですが、ボケにツッコミをちゃんと乗せていく大事さを改めて感じました」と進化した点を挙げた。

そして今回の審査では、久保田が2人の漫才について「完成しました」と絶賛。相方でツッコミ担当のドーナツは「そんなことを言われたので、『優勝やん』と2人でハモっちゃいましたね。めちゃくちゃうれしかったです!」と笑顔を見せた。

ROUND1で1位通過のぐろうと同期の空前メテオ。12組中、出順2番での決勝戦進出に驚きを隠せない様子だった

2位通過の空前メテオは、審査員を務めたお〜い!久馬(プラン9)がNSC在学時代の恩師。茶屋は「久馬さんは僕らが1、2週間かけて書いたネタを1秒くらいで見抜くんです。その上で『このボケはどう?』とすぐに提案してくださったりして。しかもそれが僕らの考えるボケよりおもしろいから、嫌になりましたね」と苦笑い。

大門も「アドバイスが早いんです。ROUND2のほかの演者の審査を見てもそれは思いました」と驚いたそう。そんな久馬に審査してもらえたことについて、「成長を見せることができた気がします。これでここまでやってきましたよって」と素直に喜びを語った。

■ 愛ある厳しいコメントが、大会を勢い付ける

出演者12組(C)ytv

司会の藤崎マーケットは収録後、今回の林の審査について「天才ピアノストへの審査評では、厳しく言ったことについて『ごめんなさいね』と謝っていましたよね。だけど細かいところまで的確に物事を見て、言葉に出せる人やなって思いました。怒っているとかじゃなく、正直なことをちゃんと言ってくれる」と語り、「初審査とは思えない」と舌を巻いていた。

トキは「なかには厳し目な審査評もありましたが、すごく愛情を感じました。芸人のなかには、審査員側の芸人と飯を食いに行ったりすることもある。だからこそ審査員は『もっとこうしてくれよ』と希望を込めて、コメントしていたと思います。あと今回はみなさん、ラストイヤーあたりの芸人に特に厳しく言っていた気がします。発破をかける意味もあったのでは」と分析。

審査員が厳しい目を光らせ、オブラートに包むのではなくハッキリとコメントを残したROUND2。田崎は「全審査員の言葉はすべて響くものがありましたが、特に林さん、久保田さんの『感じ』が素晴らしかったですよね。それが当たり前になったら、大会としてもっと良くなる気がします。たくさんある賞レースのなかでも差別化されるのではないでしょうか」と期待を寄せた。

ROUND3(放送日未定)は、決定戦進出をかけた最後の予選会とあってさらなる激戦が予想される。そこでまたどんな審査がおこなわれるのか、楽しみでならない。

『3度のチャンスを掴み取れ! ytv漫才新人賞 ROUND2』はTVerで見逃し配信中。『ytv漫才新人賞決定戦』は2024年春に放送予定。

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