巨匠「あえて追い出す」 埼玉で新たなシェイクスピア・シリーズ 吉田鋼太郎さんら「ハムレット」で始動へ

吉田鋼太郎さん( (C)西村淳)

 巨匠の魂を受け継いだ「吉田シェイクスピア」が始動する。彩の国さいたま芸術劇場(埼玉県さいたま市中央区)はこのほど、2024年5月から新たに「彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd(セカンド)」をスタートさせ、第1弾として舞台「ハムレット」を上演すると発表した。前シリーズから引き続き芸術監督を務めるのは俳優の吉田鋼太郎さん(64)。「本当に面白いシェークスピアを目指す。埼玉から世界へ発信したい」と語る。

 シェークスピア全37作の上演を目指し、川口市出身の故蜷川幸雄さん演出・監修の下、1998年に始まった前シリーズ。英国での公演など国内外で高い評価を受けた。5作品を残して蜷川さんが亡くなったため、常連俳優だった吉田さんが2代目芸術監督として演出を手がけ、2023年2月に完結。後継企画に注目が集まっていた。

 タイトルに「セカンド」とついているが、続編ではなく、新しいシリーズの立ち上げとなる。吉田さんは「蜷川さんがともした灯は大きい。人気シリーズをこのまま終わらせる手はないと思っていたので、心の底からうれしい」と喜ぶ。25年には「マクベス」、26年には「リア王」と、1年に1作品のペースで上演する。

 前シリーズでは、女性役を男性が演じる「オールメール」など蜷川さんの演出手法を積極的に取り入れた。けれど新シリーズでは「リスペクトは残しつつ、第1弾ではあえて蜷川さんを追い出して作ろうと思う。自分のシェークスピアがどんなものになるのか挑戦したい」。約400年前の戯曲にもかかわらず、現代人にも響く名言が多いシェークスピア。原点に戻り、「せりふ劇であることを重視した作品を作りたい」と目を輝かせた。外部の演出家を呼ぶなど新しい試みにも取り組んでいきたいという。

 シェークスピア四大悲劇の一つ「ハムレット」。王子ハムレットが父の毒殺を知り、復讐(ふくしゅう)を決意する物語だ。主人公を演じるのは舞台・映画で活躍する俳優の柿沢勇人さん。吉田さんは復讐の対象となるデンマーク国王・クローディアスを演じ、演出も手がける。「柿沢君にずっとハムレットをやってほしいと思っていた。演じられる数少ない役者」と太鼓判を押す。

 改修工事中のさいたま芸術劇場は来年リニューアルオープン。記念の年に始まる新しい舞台に、吉田さんは「埼玉だからこそ大きなシリーズに育ってきた。皆さんの期待を裏切らないよういい芝居を作りたい。ぜひ応援して」と呼びかけた。

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